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“新年”金への期待
年金数理人/日本アクチュアリー会 正会員 中林 宏信
● AIJ投資顧問事件で揺れ動いた厚生年金基金制度
  明けましておめでとうございます。昨年はいろいろな事がありましたが、今年は皆様に幸多き年でありますようお祈りいたします。
  昨年は企業年金にとって目まぐるしい動きがあった年でした。
  1月――確定拠出年金の企業型年金で長年の課題であった加入者が掛金拠出できるマッチング拠出が施行され、併せて個人型年金が10周年を迎えました。まさに企業年金にも自助努力が本格的に始まった年といえましょう。昨年末の衆議院選挙で自民党が圧勝し政権交代を果たしましたが、その自民党の政権公約にも「自助」、「自立」が盛り込まれています。この流れは今後も続くことでしょう。
  2月――AIJ投資顧問の年金消失事件が明らかになり、厚生年金基金や確定給付企業年金に大きな影響を与えました。特に厚生年金基金についてはこの事件に留まらず、その財政状態の悪化が注目されるところとなり、その後の存続・廃止論につながりました。
  3月――企業年金の中でも最も普及していた適格退職年金が廃止されました。廃止まで10年の経過期間がありましたが、企業年金に移行できたのは約3割と、課題を残した廃止措置でした。
  4月――民主党の作業部会で将来的に厚生年金基金制度を廃止するとしたうえで、財政難に陥った基金の構成企業には公的資金を投入せず、金融支援で対応していくことを柱とした中間報告案が作成されました。厚生労働省は「厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する有識者会議」の第1回目を開催し、厚生年金基金の見直し議論が始まりました。
  5月――「退職給付に関する会計基準」と「退職給付に関する会計基準の適用指針」が公表され、貸借対照表に未計上の未認識債務の即時認識の改正や、退職給付債務等の計算における退職給付見込額の期間帰属方法の見直しや割引率の設定方法が見直されました。確定拠出年金の制度拡充を図ろうとする「成長ファイナンス推進会議」の中間報告も公表されました。
  6月――自民党もAIJ投資顧問による年金消失問題を受けて厚生年金基金の制度改革案をまとめました。積立不足の状況で解散を可能とする「あるだけ解散」を許容し、公的資金の充当も盛り込んだ改革案となっています。
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