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第1回
相続時精算課税、おすすめしても大丈夫?(前編)
税理士/福田真弓税理士事務所 代表 福田 真弓
  平成25年度税制改正関連法案がこの3月末に成立しました。これにより相続税は平成27年1月より基礎控除が縮小し、最高税率がアップします。
  これまで100人のうち約4人にしか課税されなかった相続税は、改正後は課税対象者が6〜7人に増えるとされています(都市部では対象者がさらに多くなると予想されています)。このような状況から、富裕層のみならず一般の家庭でも、相続・贈与の問題について関心が集まっています。生命保険営業の現場でも、今後、より実践的な知識が求められるのではないでしょうか。
  この連載では、相続問題に強い税理士として活躍され、『必ずもめる相続の話』『必ずもめる相続税の話』などの著書もある福田真弓先生に、私たちの身近に起こりうる様々な相続・贈与の問題について、現場でのエピソードを交えてわかりやすく解説していただきます。
  第1回目は、生保営業の現場でもよく目にする「相続時精算課税」と「暦年課税」についての話題です。
対象者が広がった相続時精算課税制度を活用すべき?
  平成25年度の税制改正で、相続時精算課税制度が今までより使いやすくなります。
  平成27年1月1日以後の贈与から、贈与者の年齢要件が60才以上(現行は65才以上)に引き下げられ、受贈者の範囲に20才以上の孫(現行は子などの推定相続人のみ)が追加されることになりました。これにより、祖父母から孫に対しても1人当たり2,500万円までは、贈与税の負担なく贈与が行えます。
  「高齢者はお金を貯めこまず、子や孫にどんどん贈与しましょう。そのお金を消費に回してもらえたら、景気もよくなり一石二鳥です」そんな国の思惑も透けて見えそうです。
  もともと生前贈与の一番のネックは、その税負担の重さでした。贈与税には「暦年課税制度(以下、暦年課税)」と「相続時精算課税制度(以下、精算課税)」の2種類があります。
  暦年課税の非課税枠は、もらう人1人あたり年110万円です。それを超えると最高税率50%(改正後は55%)の累進課税で課税されるため、一度に多額の財産を渡しにくい制度です。
  一方、平成15年に導入された精算課税は、同じ「あげる人・もらう人」の間なら、一生涯2,500万円の特別控除額が複数の年にわたって使えます。特別控除額を超えた場合の税率も一律20%です。「それなら精算課税を使った方が得なのでは?」と思う方も多いでしょう。
  でも、私が精算課税をおすすめすることはめったにありません。なぜなら、この制度には大きな“落とし穴”があるからです。
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