Home > 税と社会保障 > 相談事例からひもとく“もめない相続”

第2回
相続時精算課税、おすすめしても大丈夫?(後編)
税理士/福田真弓税理士事務所 代表 福田 真弓
  平成27年より相続税の基礎控除額が縮小されることになり、多くの人にとって身近になってくる相続税・贈与の問題。保険営業パーソンにも、より実践的な知識が求められます。
  今回は第1回に引き続き、相続時精算課税制度について解説します。相続時精算課税の“落とし穴”とは?そしてどんな人なら、相続時精算課税が向いているのでしょうか。
精算課税の“落とし穴”あれこれ
  相続時精算課税(以下、精算課税)の“落とし穴”として考えられるものを挙げたところ、結構たくさんありました。そのうちのいくつかをご説明します。
・親より先に子が亡くなると損
  親より先に子が亡くなった場合、精算課税で贈与を行っていなければ、子の代襲相続人である孫が親から直接財産を相続します。相続税の課税は1回です。でも、過去に精算課税で親から子へ贈与があった場合、その財産には
   子から孫への相続時
   親から子への相続時(子の代わりに孫が精算)
の2回、相続税の課税が行われるので、その分損になります。
・相続時にない財産も相続税の対象に
  精算課税で贈与を受けたお金を、全額マイホームの購入資金にあてたとします。
  運悪く、マイホームが火事や地震で滅失したり、住宅ローンの返済が滞りマイホームを手放したりした結果、親の相続時には子の手元に何も残っていなくても、相続税を納める義務は消えません。
・他の相続人に迷惑がかかるかもしれない
  相続税の総額は「相続財産+精算課税による贈与財産」を、相続人が法定相続分で相続したとして計算します。ということは、暦年課税ではなく精算課税で贈与した方が、他の相続人の相続税の負担も重くなります。
  さらに、相続税は「現金・一括払い」が原則です。精算課税で贈与を受けた人が相続税を払えないと、連帯納付義務により、他の相続人が贈与財産に係る相続税を納める義務を負うことになります。
・小規模宅地等の特例や物納の対象外に
  小規模宅地等の特例や物納は、「相続」を原因として取得した財産にしか使えません。精算課税で贈与を受けた財産は、「相続」ではなく「贈与」で取得した財産なので、課されるのは相続税でも、これらの特例は使えません。
※ これ以降は会員専用ページです