Home > 税と社会保障 > 相談事例からひもとく“もめない相続”

第3回
相続対策には生命保険より不動産?
税理士/福田真弓税理士事務所 代表 福田 真弓
不動産投資で相続対策?
  先日、とある新聞記者の方が「『大増税時代の今こそ、ワンルームマンションへの投資で相続対策を!』というセミナーに足を運んだら大盛況で驚いた」とおっしゃっていました。
  「現金で贈与するよりワンルームマンションで贈与した方が、贈与税がお得です」「安定した家賃収入が見込め、ご自身の公的年金やお子様の生活資金の足しになります」と言われたら、相続について考えている人が不動産投資=選択肢のひとつと感じるのも、あながち不思議ではありません。果たしてその言葉を額面通り受け取って、不動産投資を行ってもよいのでしょうか。
なぜ不動産が相続対策になるのか
  キャッシュと不動産とでは、相続税上の評価額にかなりの差があります。2億円のキャッシュで不動産を購入し、それを人に貸せば、評価額は約1億500万円に下がります。
  2億円を子ども2人で相続すれば、各自の取り分1億円から相続税1,670万円を払い、8,330万円が手元に残ります。分けるのも納税するのも簡単です。一方、相続する財産が1億500万円の不動産なら、相続税は各自430万円で済みます。しかし、不動産を持分2分の1ずつで共有し、納税資金も各自で準備しなければなりません。
  本来は、相続への準備は@遺産分割A納税資金、そしてB相続税の軽減の順で行うのが鉄則ですが、一般的には「相続対策=B相続税の軽減」だと誤解されている点が問題です。見た目の相続税が減ったとしても、分けられない・払えない、では本末転倒でしょう。
  仮に、平等に分けられるよう「相続税評価額」がほぼ同じ中古マンションを複数買ったとしても、エリアや賃料、入居者の有無、物件の築年数や管理状態などから、いくらで売れるか、いくらの収益を生むかといった「時価」には必ず差が生じます。財産分けはあくまで「時価」で考えるので、子どもが持ち続けるにしても売るにしても、どの物件を相続するかでもめる可能性は大きいのです。
  ※文中の相続税額は、平成27年1月1日以降に相続が発生したものとして算出しています。
※ これ以降は会員専用ページです