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第8回
贈与の前に母の長生き対策を
税理士/福田真弓税理士事務所 代表 福田 真弓
母の財産は誰のもの?
  私が参加している「相続・後見マネー塾」では、メンバーが月に1回集まって、相続、後見、年金、生命保険などの各自が抱える事案につき、相談や議論をしています。
  先日は雑談中に「父が亡くなると、母のお金の使途や財産に子どもが口を出すようになる」ことが話題になりました。ちょっとした旅行や買い物でも、母がお金を使うと息子がとがめるとか、娘が急に母と同居したいと言い始めたとか…。
  もちろん子は、母が詐欺などの被害にあわないよう、財産の管理には十分気を配る必要があるでしょう。でもメンバーからは「自分が将来、相続する財産が減ることが心配なのかな」「一緒に住めば、母のお金を自分が自由に管理できると思っていたりして」という辛口な意見もありました。
  実際に私が受けるご相談も、生前贈与や二次相続に関するものが増えています。相続税の負担を減らしたい子の気持ちも理解できますが、そもそも母があと何年生きるかは誰にも分かりません。お金が有り余っている家庭は別として、子の「相続税対策」より母の「長生き対策」の方は大丈夫なのか、心配になることがあります。
生前贈与で相続税対策をしておかないと、相続税は払えない?
  平成27年1月1日以後、母が子2人に1億円の財産を残して亡くなると、相続税額は合計770万円です。ただし、この1億円の半分が自宅の敷地であり、小規模宅地等の特例を使えれば(同居の子またはマイホームを持たない別居の子が、自宅の敷地を8割引で相続できれば)、相続税額は180万円で済みます。
  仮に母が残した財産が2億円だったとしても、そのうち半分が自宅の敷地で小規模宅地等の特例を使えれば、相続税額は1,160万円です。非課税限度額ほどの死亡保険金を受け取れる生命保険に加入していれば、相続税はその保険金でほぼまかなえます。
  国税庁のデータによれば、財産が2億円を超える相続税の申告件数は年間14,276件(平成23年)であり、相続税の実地調査件数はそれより約1割少ない年間12,210件(平成24事務年度)です。相続税の納税資金や税務調査への備えなど、具体的な相続税対策が必要になるのは、財産が2億円を超える家庭だと考えておけばよいでしょう。
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