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中小企業が多く利用する中退共の注意点!
退職金規程との関係も確認を!
日本アクチュアリー会 正会員/年金数理人 中林 宏信
本連載では、事業主にお知らせしたい中小企業が陥りやすい従業員退職金準備制度における「困った!」事例を取り上げ、退職金・企業年金の専門家であり、生命保険にも通じている筆者が、解決策も含め解説していきます。
● 中小企業ならではの制度の落とし穴
  中小企業で従業員に退職金制度を実施する場合、その退職金を準備する手段にはさまざまなものがあり、代表的なものとして、生命保険、中小企業退職金共済(中退共)、確定給付企業年金(DB)、確定拠出年金(DC)などがあります。
  かつては、適格退職年金(適年)が存在し、使い勝手が良く、中小企業に多く普及していましたが、平成24年3月末に廃止されてしまいました。そこで、適年から中退共、DB、DCに移行する企業もありましたが、大半は解約されてしまったケースが多いと思います。
  このコーナーでは、中小企業が従業員退職金を準備する手段を紹介し、それぞれの問題点を示していきます。今回は通称「中退共」と呼ばれている「中小企業退職金共済制度」を取り上げます。
  生保営業マンが、中小企業の事業主を訪問する機会は多いと思いますが、すでに中退共を導入している中小企業は多いので、中退共の話題は良い営業ツールとなるかと思います。中退共の特長(メリット)や他の制度にないユニークな点など紹介すべき点は色々ありますが、まず憶えていただきたいのは、名称にもあるように中小企業のための退職金制度なので、「中小企業でなくなったら、やめる(解約する)か、他制度(特定退職金共済(特退共)かDB)に移行しなければならない」ことです。この点は、意外と事業主が気付いていない点であり、見過ごしていると後で困ったことにつながりかねません。
  企業の中小企業の要件は業種毎に異なり、下表のようになっています。訪問する企業の業種、従業員数、資本金はチェックしておいたほうがいいですね。
業種 常用従業員数 資本金等
小売業 50人以下 または 5千万円以下
サービス業 100人以下 5千万円以下
卸売業 100人以下 1億円以下
その他業種 300人以下 3億円以下
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