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中退共とはひと味違う特退共のメリット
日本アクチュアリー会 正会員/年金数理人 中林 宏信
本連載では、中小企業が陥りやすい従業員退職金準備制度における「困った!」を取り上げ、企業年金の専門家であり、年金数理人、アクチュアリーでもある筆者が、解決策も含め解説していきます。
● 中退共とはどう違う?
  今回は通称「特退共」と呼ばれている「特定退職金共済制度」を取り上げます。生保営業マンが、中小企業の事業主を訪問するにあたって、「中小企業退職金共済」(中退共)と同様に特退共を導入している中小企業も多いので、この話題も良い営業ツールとなるかと思います。特退共の特長(メリット)や他の制度にないユニークな点など紹介すべき点は色々ありますが、まずは類似する中退共との違いから見ていきましょう。
  中退共は日本に1つしかないですが、特退共は商工会議所、商工会、商工会連合会等が設置することができ、各地区に存在します。そして、中退共のように中小企業の要件は存在しないため、中小企業でないと入れないということはありません。「中小企業でなくなったら、やめる(解約する)か、他制度(特退共か確定給付企業年金)に移行しなければならない」とうこともないわけですね。東京商工会議所を例にとれば、定める地区(東京23区)内で事業を営む事業主であれば、特退共に加入できます。
● 中退共よりも良い面も
  特退共は中退共と同様に「掛金建て」で給付が決まる制度なんですが、掛金や給付の仕組みは結構違います。中退共は最低でも掛金月額5,000円となっていますが、特退共は掛金月額1,000円から加入できます。中退共が支払う給付は、1年加入しないともらえず、1年以上2年未満の加入では掛金元本を割ってしまうことを前回お伝えしましたが、加入1年だと12万円かけて給付が36,000円と30%しか戻ってきません。
  一方、特退共は加入1年でも約95%は戻ってきます。長く加入すれば中退共が支払う給付が逆転しますが、従業員の定着率が低く、入れ替わりが頻繁にあるのなら、特退共のほうが相対的に有利かもしれません。もちろん、中退共にも新規導入の時の1年間の掛金助成や18,000円以下の掛金を増額したときの掛金助成があったり、事務管理費を取られないメリットはありますが、特退共を選択する意味はあると思います。
  なお、特退共と中退共は併用できますので、最大60,000円の掛金月額を全額損金算入することもできます。
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