Home > 税と社会保障 > お客さまの信頼を得る相続対策のご提案

第5回
「相続税の納税対策の観点から、生命保険の受取人を見直す」
一般社団法人日本想続協会 代表理事/税理士 内田 麻由子
  お盆休みに実家へ帰省した方も多いことでしょう。家族が集まるときは、お墓参りなどご先祖様の供養とともに、介護や相続など家族にとって大事なことを話し合う良い機会でもありますね。
  今月は、相続税の納税資金として生命保険を活用する事例についてみてみましょう。
● 相続税がいくらかかるか心配・・・
  画家の龍一さん(80歳)は、東京都内で妻と2人暮らしです。妻の静江さん(77歳)が1年前に軽度の認知症と診断されましたが、すぐ近くに住む長女の明子さんが、ほぼ毎日通ってきて家事を手伝ってくれるので、とても助かっています。今後は、介護サービスなども利用しながら、できる限り自宅で妻と生活したいと考えています。
  龍一さんの財産は、親から相続した都内の自宅土地1億円、自宅家屋1,000万円、長女の自宅の敷地8,000万円の合計1億9,000万円です(長女の自宅家屋は夫名義)。ほかに、妻が受取人となっている生命保険(保険金額1,000万円)があります。預金はほとんどありません。相続人は妻と長女の2人です。
  龍一さんは、自宅の土地・家屋は妻へ、長女の自宅の敷地は長女へ遺したいと考えています。長女の明子さんは、来年(平成27年)から相続税が増税されると聞き、わが家の相続税がいくらになるのか心配です。そこで、税理士に相続税の試算をしてもらうことにしました。
  妻が相続する自宅土地(約200u)については、「小規模宅地等の評価減の特例」が使えます。土地の評価額1億円×80%=8,000万円を減額することができますので、評価額は、1億円−評価減8,000万円=2,000万円です。また、相続人が受け取る生命保険金については、500万円×2人(法定相続人の数)=1,000万円の非課税枠がありますので、評価は1,000万円−非課税1,000万円=0円です。
  相続財産の評価額は、妻が相続する財産(自宅土地2,000万円+自宅家屋1,000万円+保険金0円=3,000万円)と、長女が相続する財産(土地8,000万円)の合計1億1,000万円です。この1億1,000万円から、基礎控除額3,000万円+600万円×2人(法定相続人の数)=4,200万円を控除した6,800万円に対して、相続税がかかります。(基礎控除は平成27年以降の場合。以下同じ。)
※ これ以降は会員専用ページです