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第2回
自社株の承継方法と承継時における課題
一般社団法人日本想続協会 代表理事/税理士 内田 麻由子
  高齢化に伴い、社長の平均年齢も上昇しています。帝国データバンクの調査によると、2014年末の社長の平均年齢は59歳、1990年以降で過去最高齢を更新しました。事業承継対策は、一朝一夕にはできません。後継者を早く決め、長期計画で経営権の承継、自社株の承継、争続対策、相続税対策などを講じていくことが必要です。
  前回は、自社株の評価方法について確認しました。今回は、自社株を後継者へ承継する方法と、承継時における課題について、ご一緒に考えてみましょう。
● 自社株の承継方法
  自社株を後継者へ承継する方法には、「生前贈与」「売買」「相続」の3つがあります。それぞれの方法のメリット・デメリットを比較してみましょう。
自社株の
承継方法
メリット デメリット
生前贈与
 ・  後継者への計画的な自社株の移行が可能。
 ・  後継者の必要資金としては、贈与税の納税資金の確保ができればよい(納税可能な範囲で贈与するという方法もとれる)。
 ・  贈与された自社株は特別受益とされ、相続発生時に遺産分割(遺留分減殺請求)の対象となる。
売  買
 ・  相続発生時に特別受益とはならず、遺産分割(遺留分減殺請求)の対象外となる(ただし、適正価格での売買であること。不当に安価な取引の場合、贈与とみなされる場合もある)。
 ・  自社株購入のため、後継者は多額の購入資金を必要とする場合がある。
 ・  経営者の株式売却益に対して、譲渡所得税(15%)・住民税(5%)ががかる(申告分離課税)。
相  続
 ・  遺言を活用し、必要な対応をしておけば、一括して後継者に移行させることが可能。
 ・  相続税の納税資金が不足する場合には、相続した自社株を会社に売却して得た代金を納税資金に充てることもできる(この場合、売却時期など一定の要件を満たせば、売却益についてみなし配当課税はされず、全額が譲渡所得となる)。
 ・  遺言がない場合、自社株が後継者以外の相続人に分散し、後継者が安定した経営権を確保できない恐れがある。
 ・  遺言がない場合、遺産分割協議の成立まで株主が確定せず、株主総会運営に支障をきたす可能性がある。
 ・  遺言の内容が他の相続人の遺留分を侵害している場合には、遺留分減殺請求をされる恐れがある。
  自社株を承継する際の課題と対策については、次の3点があげられます(株価の引き下げについては、別途、回を改めて述べます)。
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