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第4回
代償金を生命保険で準備する
一般社団法人日本想続協会 代表理事/税理士 内田 麻由子
  夏休みには、お子さんやお孫さんと楽しく過ごすという方も多いことでしょう。今年は戦後70年という節目の年でもあります。子や孫に遺すべき最大の遺産は「平和」ではないでしょうか。
  さて、前回は役員退職金を生命保険で準備する方法についてお伝えしました。今回は、代償金を生命保険で準備する方法についてご一緒に考えましょう。
● 遺言に代償金を明記する
  経営者Aさんには、長男(後継者)、長女、次女の3人の相続人がいます。Aさんの財産は、自社株2億円、自宅・預貯金4000万円の合計2億4000万円です。Aさんは、自社株については後継者である長男にすべて相続させたいと考えています。しかし、長女と次女には遺留分(1人あたり法定相続分8000万円の2分の1で4000万円)があります。自宅・預貯金4000万円を、長女と次女へ2000万円ずつ相続させたとしても、長女と次女の遺留分を各2000万円侵害することになってしまいます。
  このような場合には、生命保険を使って、後継者以外の相続人に遺す現金を準備する方法が考えられます。ただし、保険金は遺産分割の対象外ですので、受取人を直接、長女と次女にしてしまうと、長女と次女は保険金を受け取った上で、保険金を除く財産について、長男へ遺留分減殺請求ができてしまいます。そこで、受取人は長男にしておき、長男から長女・次女へ代償金を支払うほうがよいでしょう。
  なお、遺言には、長男から長女および次女へ代償金を支払う旨を記載しておきます。代償金の支払いについて遺言に記載しておかないと、長男から長女・次女への贈与とみなされる場合があるので、長女・次女に贈与税がかかってしまいますので注意しましょう。
  次に、保険の契約者を、経営者であるAさんとする場合と、後継者である長男とする場合について、それぞれ見ていきましょう。
※契約者・受取人を会社とする場合については、連載第3回を参照。
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