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第9回
「経営者から会社への貸付金がある場合」
一般社団法人日本想続協会 代表理事/税理士 内田 麻由子
  2016年度の税制改正大綱は、法人税の実効税率を現行の32.11%から2016年度は29.97%に引き下げる方針が打ち出されました。住宅関連では、3世代同居のための住宅改修をした場合に所得税を軽減する制度が創設されます。
  さて前回は、「経営者が会社借入金の連帯保証人になっている場合」についてお伝えしました。今回は、「経営者から会社への貸付金がある場合の対処法」についてご一緒に見ていきましょう。
● 事例
  Aさん(70歳)は、飲食業を営む創業40年の甲社の経営者です。ここ数年は、後継者となった長男Bさんの奮闘もあり業績は好調です。しかし、過去に会社の資金繰りが厳しかった時期もあり、Aさんがこれまで会社に貸し付けた金額は累計で6,000万円になっています。経営者から会社への貸付金は、会社にとっては役員借入金です。甲社は現在、債務超過の状態であり、自社株の評価額はゼロです。なお、甲社の株主構成は、Aさん180株、Bさん20株となっています。
  Aさんの相続人は、後継者である長男Bさんのほか、長女Cさんと次女Dさんの3人です。このままAさんに相続が発生した場合には、Aさんから会社への貸付金6,000万円は、相続財産として遺産分割の対象となります。後継者以外の相続人が貸付金を相続した場合には、会社へ返済を求めてくることも考えられます。また、この貸付金は相続税の課税対象になります。会社に借入金を返済できるだけの資金がなく、Aさん個人の金融資産も少ないという場合には、相続税の納税資金が不足することもあります。このように経営者から会社への貸付金がある場合には、どのような対策があるのでしょうか。
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