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第11回
「改正された事業承継税制を活用する」
一般社団法人日本想続協会 代表理事/税理士 内田 麻由子
  中小企業の経営者を対象に、相続税や贈与税を猶予する「事業承継税制」の利用者が増えているようです。中小企業庁の推計によると、これまで平均して年間170件程度だった利用件数が、2015年は350件を超える見通しとのことです。今回は、2015年から改正された事業承継税制を活用した相続対策の事例について、ご一緒に見ていきましょう。
● 事例
  Aさん(70歳)は、都内にある老舗和菓子店の7代目です。これまで妻Bさん、後継者である長男Cさんと共に店を守ってきました。Aさん夫妻には、長男Cさんと長女Dさんの2人の子どもがいます。長女Dさんは京都の老舗漬物店へ嫁いでおり、Aさんの財産を兄Cさんが相続することについて異論はありません。
  長男Cさんは、代々受け継いできた伝統の味を守りつつ、現代風の和菓子創作に挑戦したり、地域の行事や業界の発展にも貢献するなど、8代目として立派に成長しています。そのためAさんは、そろそろCさんへ名実ともに事業を承継したいと考えています。
  しかし、心配なのは相続税です。Aさんの資産は、自社株(300株)3億円、自宅土地・家屋7,000万円、預貯金3,000万円の合計4億円です。もし現状で相続が発生し、妻Bさんと長男Cさんが財産を1/2(2億円)ずつ相続した場合には、Cさんの相続税は4,610万円になります(妻Bさんは配偶者の税額軽減により相続税なし)。その後、二次相続で妻Bさんから2億円を長男Cさんが相続した場合には、Cさんの相続税は3,340万円です。一次相続・二次相続の相続税は、合計で7,950万円になります。
  Aさんは、事業承継税制が改正されて使いやすくなったと聞いたため、その内容について確認するとともに検討することにしました。
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