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第12回
「国外転出(贈与・相続)時課税制度への対応策」
一般社団法人日本想続協会 代表理事/税理士 内田 麻由子
  これまで様々な事業承継対策についてご紹介して参りました当連載も、今回で最終回となりました。今回は、2015年7月から施行されている「国外転出(贈与・相続)時課税制度」について、ご一緒に見ていきましょう。
● 事例
  Aさん(75歳)は、神奈川県で製造業を営む経営者です。長男(45歳)が後継者として一緒に会社を経営しており、会社の業績も好調です。長女(42歳)は、夫の仕事の関係で10年前からドイツに住んでおり、日本に帰ってくる予定はありません。妻は5年前に亡くなっています。
  Aさんの財産は、自宅5,000万円、自社株1億5,000万円、上場株式5,000万円、投資信託5,000万円、預金1億円の合計4億円です。Aさんは、そろそろ遺言書をつくっておこうと考えています。その内容は、長女の遺留分も考慮して、「長男へ自宅と自社株と預金(合計3億円)を相続させる。長女へ上場株式と投資信託(合計1億円)を相続させる。」と考えています。
  Aさんは、遺言についての自分の考えを顧問税理士に話しました。すると、税理士から「Aさん、その遺言内容では、長女へ相続させる上場株式と投資信託の含み益について、Aさんに所得税がかかってしまいます」と、思いもよらないアドバイスを受けました。相続財産について所得税がかかるとは、いったいどういうことなのでしょうか。
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