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うつ病とうつ状態
株式会社査定コンサルティング 代表取締役 上田 香十里
  内閣府の2012年版「自殺対策白書」によれば、2011年の自殺者数は3万651人で前年よりやや減少したものの、過去14年間連続で3万人を超えたことになります。年齢では60歳代が5,547人で最も多く、性別では男性が7割弱です。自殺に関する成人の意識調査結果でも、自殺を考えたことのある人は20〜50歳代の各年代で4人に1人はいることが分かりました。
  さて、一般的には保険加入が厳しいうつ病ですが、今回はうつ状態とうつ病についてお話しします。たとえばある人が、見た目にもぐったりしていて心身衰弱していたとします。しかし衰弱の原因は調べてみないと分かりません。もしかしたら、栄養失調なのかもしれないし、働きすぎて過労死寸前なのかもしれないし、何かの病気が原因なのかもしれません。その病気はただの風邪かもしれないし、重い病気かもしれません。一見したある人の衰弱状態の原因が、病気なのか病気ではないのか。病気なら何の病気か、そこまで分かれば確定診断がついたということになります。つまり○○病という時には確定診断がついたということです。うつ状態(抑うつ状態)とうつ病の関係もこれと同じ関係にあります。
■うつ状態だけでは病気と決めつけられない
  うつ状態とは憂うつ、気分が重い、気分が沈む、悲しい、不安である、イライラする、元気がない、集中力がない、好きなこともやりたくない、細かいことが気になる、悪いことをしたように感じて自分を責める、物事を悪い方へ考える、死にたくなる、眠れないなどを自分で精神的に感じます。身体的にも症状が出ます。食欲がない、体がだるい、疲れやすい、性欲がない、頭痛、肩こり、動悸、胃の不快感、便秘がち、めまい、口が渇くなどです。周囲から見ても、表情が暗い、涙もろい、反応が遅い、落ち着かない、飲酒量が増えたなどの症状から分かります(出典:「内科医のための精神症状の見方と対応」宮岡等著、1995年、医学書院発行)。
  しかし、これらのうつ状態の症状だけから病気か病気でないかを直ちに決めることはできません。というのも、仕事や勉強の失敗、人間関係の失敗、失望などから、たとえ正常な人でも一時的にうつ状態になることがあるからです。これは日常的によく見られる正常な反応なのではないでしょうか。もちろん正常な反応といっても、割り切りが早い人と、なかなか割り切れない人とでは、うつ状態からの回復にかかる時間が違ってくると思われます。
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