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脳幹出血
生命保険アンダーライター 上田 香十里
  最近有名な歌手の方が脳幹出血で亡くなられたことは記憶に新しいかと思います。救急搬送されましたが、病院到着時には呼吸が停止しており意識不明の重体でした。人工呼吸器を装着しましたが、脳幹出血であったため積極的な治療は行われませんでした。脳幹出血は脳出血の一つで、最も重症かつ致命的な脳出血です。[脳出血については、本連載の2012年5月17日更新記事を参照ください]
■生命維持装置の機能停止が「脳死」
  「脳出血」とは脳実質内の出血のことをいい、脳内血腫による圧迫症状および頭蓋内圧亢進症状を示す疾患です。脳出血の原因のほとんど(約80%)は「高血圧」です。他の原因には動静脈奇形・脳腫瘍からの出血・動脈瘤破裂・もやもや病などがあります。
  脳動脈は、他部位の動脈に比べ、血管の壁の厚さや中膜筋細胞が少なく、外弾性板がなく外膜結合組織に乏しいです。このため、圧に対する壁変化が生じやすい動脈です。よって高血圧を原因として起きた動脈壊死を生じた血管の破綻により、脳出血が起こります。
  脳幹は、簡単に言うと生命維持装置です。具体的には、中脳・橋・延髄という部分に分かれ、呼吸や体温、心臓の働きを制御する中枢があります。この神経細胞の集合体である中枢は、神経核とよばれます。したがって脳幹全体の機能停止が起こるといわゆる「脳死」となるのです。
  脳幹にあるその他の中枢や神経経路には、自律神経機能中枢、姿勢反射の中枢、意識と覚醒に重要な神経回路である脳幹網様体、脊髄から視床へ上行する感覚神経路、上位中枢から脊髄に下降する運動神経路などがあります。つまり脳幹は、多種多様な神経核から構成され、数多くの脳神経が出入りしているわけです。
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