Home > 医療・介護・相続等の現場 > 日進月歩の「がん」治療法

先進医療から保険診療の適用への昇格が期待される
粒子線治療(前編)
医療ジャーナリスト/有限会社イン‐ストック 浦山 明俊
  一生のうちに2人に1人はがんにかかり、3人に1人はがんで亡くなると言われています。この“国民病”ともいえるがん。その治療法のなかでとくに注目されているものを医療ジャーナリストの浦山明俊さんに解説していただきます。第1回目は、先進医療に指定されている治療法のなかで実績の高い粒子線治療を取り上げます。
■病巣の周辺の正常細胞へのダメージが少ない放射線を開発
  放射線とは高エネルギー粒子の流れの総称です。放射線には種類がたくさんあります。光は最もよく知られた放射線の1つです。
  放射線治療は、がん細胞に放射線を当てて、がん細胞の成長や分裂を止め、がん細胞を破壊する治療です。放射線を当てて「がんを叩く」と聞くと、レーザー光線のようにがん細胞を焼き切るイメージを持つ人がいますが、そうではありません。
  がん細胞はDNAを複製して、無制限に増殖を繰り返します。放射線ががん細胞のDNAに照射されると、DNAが破壊されて、がん細胞は死滅し、増殖もできなくなってしまいます。これが放射線治療の基本です。
  これまでの放射線治療でよく使われてきたエックス線では、病巣の周りにある正常な身体の組織も同じ量の放射線を浴びることになります。
  正常な細胞のDNAも破壊されるため、皮膚炎や脱毛、全身の倦怠感、ときには放射線性直腸炎や放射線性肺炎、放射線性膀胱炎などをはじめとした様々な副作用も起きてしまうものでした。
  そこで病巣へ放射線を集中させ、周辺組織には影響をあまり与えない放射線治療が開発されました。それが「陽子線治療」と「重粒子線治療」です。陽子線治療も重粒子線治療も、一般的に「粒子線治療」と総称されています。
※ これ以降は会員専用ページです