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子宮筋腫で子宮全摘術
ファイナンシャル・プランナー/蓋INKS 代表 山田 静江
14日間入院
かかった費用: (手術前)MRI検査
(手術前)ホルモン療法の注射
入院期間中の医療費など
入院雑費(14日間)
お見舞い返しなど
  



1万円
4.8万円
9.3万円
6.8万円
3.2万円
通院は、退院から1週間後と1カ月後の2回のみ
■ 手術後の負担を考えて、筋腫を小さくしてから手術へ
  会社員の山口洋子さん(41歳・仮名)は、35歳のとき、お腹が張っているような気がしたため婦人科を受診したところ、子宮筋腫があることがわかりました。複数の筋腫があるケースで、@筋腫のみ切除、A子宮摘出、B経過観察、の3つの選択肢がありましたが、手術となれば10日以上の入院が必要です。当時、小学生の息子さんを抱えていた洋子さんは、できれば手術や入院は避けたいと思っていましたし、特に不快な症状もなかったため、そのまま様子を見ることにしました。
  それから約4年後、39歳の頃には、疲れやすく不正出血が続くなどの症状があったため、再び産婦人科で受診したところ、筋腫の一番大きいものは直径10cm以上になっていました。出血もかなりひどくなってきたので、手術を決意しました。数が多いため筋腫を残らず切除すると傷口が大きくなって、回復が遅くなるということだったので、子宮の全摘出を選択しました。
  受診したのは年末でしたが、できるだけ会社に迷惑はかけたくないため、手術の時期は決算期(3〜5月)を避けたいと申し出て、6月か7月となりました。
  また、そのときの筋腫の大きさでは、おへその下くらいから開腹することになり、傷口が大きくなることが懸念されました。そこで、手術前の4カ月間は月に1回、筋腫を小さくするため女性ホルモンを止める注射を受けました(ホルモン療法の一種、偽閉経療法)。
  手術までにかかった費用は診察料のほか、MRI検査費が約1万円と、ホルモンを止める注射代が1回1万2,000円×4回で、計4万8,000円でした。注射や検査の費用は負担に感じるほどではありませんでしたが、仕事が立て込んでいる時期の平日に、休みを取って受診しなければならなかったので、スケジュール調整が大変でした。
  手術時期は当初6月末を打診されましたが、入院が2カ月にまたがると高額療養費の面で不利になるので、7月初旬で予約しました。
手術を受けるなら月初のほうが有利です。高額療養費は1カ月あたりの医療費の自己負担が一定額を超える(自己負担限度額)と払い戻されますが、この金額は入院の期間にかかわらず月単位で計算されます。1カ月の間に入院・手術が完了すれば、高額療養費の自己負担限度額を超える可能性は高まり、実質的な自己負担はそれほど増えません。一方、月末の場合は、計算の対象期間が月をまたいで2カ月に分散するため、月単位では自己負担限度額に達せずに高額療養費を受けられない恐れがあります。例えば14日間入院して医療費が556,700円かかったケース(所得が一般で70歳未満の場合)を比較してみると下表のようになります*1。
入院時期 6月1日〜14日 6月27日〜7月10日
計算対象期間 6月1日〜14日 6月27日〜30日 7月1日〜10日
対象日数 14日 4日 10日
医療費 556,700円 156,700円(仮定) 400,000円(仮定)
自己負担(3割) 167,010円 47,010円 120,000円
自己負担限度額 82,997円*2 *4 81,430円*5
高額療養費戻り分 ▲84,013円*3 0円 ▲38,570円*6
実際にかかった費用 82,997円 47,010円 81,430円
計128,440円
*1 対比のためのシミュレーションですので、差額ベッド代や食事代など医療保険の適用外は省略しています。
*2 80,100円+(医療費556,700円−267,000円)×1%=82,997円
*3 自己負担167,010円−自己負担限度額82,997円=84,013円
*4 80,100円+(医療費156,700円−267,000円)×1% →自己負担限度額を超えていないため高額療養費は発生しない
*5 80,100円+(医療費400,000円−267,000円)×1%=81,430円
*6 自己負担120,000円−自己負担限度額81,430円=38,570円
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