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エンゼルケア
第一生命経済研究所 主任研究員 小谷 みどり
■ 2通りある「死」の定義
  そもそも死とは何でしょうか。生物的には、死は生活機能が停止した状態をいいます。人間の死は従来、@心臓が停止する、A呼吸が停止する、B瞳孔が開く、といった基準で判定されてきました。
  ところが1997年の臓器移植法成立を機に、日本では、死の定義にダブルスタンダードが生まれたのです。脳死での臓器提供を前提とする場合には「脳死が死」、提供しない場合には「心臓停止が死」となりました。つまり、死んだとみなされる瞬間が人によって異なるという状況にあります。
  臓器提供を前提とせず、心臓停止が死であっても、法的な死と生物的な死は異なります。
  たとえば、癌などで闘病の甲斐なく心肺停止となっても、遺族や本人が蘇生措置を望んでいれば、まだ死んでいないことになります。蘇生を試みない場合にはこの時点で死亡となります。
  ちなみに医師が書く死亡診断書は、死亡届や死亡保険金の請求時に必要ですが、料金は1通数千円から1万数千円と、病院によって異なります。死亡診断書がなければ死亡届を出すことも、火葬手続きもできません。
  現在、年間死亡者の8割以上は病院で最期を迎えています。病院で亡くなると、看護師が清拭(顔や首、手、足をアルコールに浸した脱脂綿で拭くこと)をします。
  最近では「エンゼルケア」と呼ばれる死後処置をする病院も増えています。体液が漏れないように口、鼻、耳、肛門に脱脂綿を詰めたり、目や口を閉じ、女性の場合は、おしろい、頬紅、口紅などで薄化粧を施したりします。
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