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エンバーミング
第一生命経済研究所 主任研究員 小谷 みどり
■ きれいな故人の最期を演出
  大切な人の死に顔は、遺された人の記憶に何年たっても残ります。ひとり暮らしなどで死の発見が遅れた場合や、事件や事故で損傷が激しい遺体は、遺族に大きな衝撃と悲しみを与えます。苦しそうにゆがんだ顔も、遺された人は脳裏から離れず、いつまでもつらい思いをするようです。
  損傷した遺体を生前の姿に近づけることは、遺された人への大切なケアです。ひとつの方法に「エンバーミング」(遺体衛生保全)があります。遺体を洗浄し、静脈から血液を排出し、動脈から防腐液を注入することで、遺体の腐敗を防ぎ、必要に応じて、顔などに復元処置を施します。
  遺体が腐敗しないので、火葬を急ぐ必要がないという利点があります。赤色の防腐液を使用するので、顔色がいいという特徴もあります。日本では、何日間もお葬式をしないうえ、亡くなって数日以内に火葬にすることが多いので、腐敗防止ならドライアイスで十分です。しかし、エンバーミングした遺体は、闘病の跡や死後硬直がなくなり、安らかな顔になります。きれいな故人の最期を演出できるという効果があります。
  感染症などで亡くなった場合、遺族が顔を近づけると感染する可能性もありますが、エンバーミングをすればこの危険が回避できます。
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