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葬儀の日に知らない姉妹が登場…
それは前妻の子であった
相続ジャーナリスト 江里口 吉雄
■ 「前妻の子にはあげたくない」後妻の意地
  ある上場企業に役員秘書として勤務する28歳の独身女性であるKさん。学生時代から交際していた男性と婚約中でもあるKさんは、両親と3人暮らしで幸せな日々を送っていた。しかし、そんな幸せの日々に突然、不幸が襲いかかってきた。父親が突然の事故で亡くなってしまったのである。
  数年前まで会社経営者であった父の葬儀は、多くの弔問客が訪れる盛大なものであった。通夜の晩、読経と共に弔問客の焼香が始まった。しばらくするとKさんはふと隣の席に座る二人の女性の存在が気になり出した。見知らぬ女性たちだが、なぜか親族の席に座っているのである。Kさんは、なんとなく妙な感じがしてきて落ち着かなかった。その妙な感じは現実のものとなった。焼香も終わり、二人の女性が席を立ち葬儀場から去っていった直後に叔母から衝撃の事実を告げられた。
  「実は、あの二人はあなたのお姉さんなの…。お父さんは彼女たちの母親と別れた後、バツイチで再婚してあなたがいるのよ。お母さんはそのことをずっと秘密にしていたのよね…。彼女たちもお父さんの子でしょ。最期のお別れをさせてあげたくて私が知らせたの」
  自分には血を分けた姉妹がいるということを28歳まで知らなかったという衝撃の事実を知ったKさんのショックは大きかった。葬儀に現れた前妻の子供たちの姿に母親も相当ショックを受けたようである。その影響なのかKさんの母親は葬儀後すぐに入院してしまい、「前妻の子に財産をとられる…、財産をとられる…」と、毎日そのことばかりを叫ぶようになってしまった。
  このままでは母親に相続のことはまかせられないとKさんは判断したが、葬儀の日に突然現れた相続人である二人の姉に対してどのように対応したらいいのか思いあぐねた。母親は違うとはいえ、姉たちも父の子であるかられっきとした法定相続人だ。しかし、父親の遺産は父親と母親が二人で築いた財産であるから、前妻の子には形見分けとして100万円ほどしかあげたくないという母親の強い思いがあることもKさんは知っている。果たしてそれでいいのか……。
  父親の遺産は、預貯金だけで4,000万円ほどあり、自宅と賃貸マンション2戸を足せば1億円を超すことは想像がつく。友人から「相続財産が1億円以上なら、相続税は40%は覚悟しておいたほうがいい」と聞かされていたので、もしもそれが本当なら4,000万円以上の相続税を払わないといけない。Kさんがそのことを母親に伝えても、彼女は前妻の子に遺産が行かない方法にしか関心がないようだった。そんな状況なのに、預貯金の全てを相続税に払って、さらに新しい相続人である姉二人の相続分はどれくらいになるのか。Kさんは一人で、悩んでも悩みきれない毎日を送っていた。
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