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共有名義の土地売却に次々と立ちはだかる難問
相続ジャーナリスト 江里口 吉雄
■ 母親の唯一の相続財産は、元実家の敷地100坪
  都内在住のSさん(62歳)は、早くに父親を亡くし、兄弟姉妹もなく、唯一の肉親である母親と賃貸マンションで長らく二人暮らしをしていた。ところがその母親も、半年前に85歳で他界してしまった。母親が残してくれた相続財産は、母親の郷里にある元実家の土地100坪だけであった。しかし元実家の土地は、母親とその弟である叔父との共有名義になっており、その叔父も10年以上前に他界しているが名義は叔父のままであるという。
  元実家の建物は、築60年以上前の30坪ほどの平屋の老朽家屋なので資産価値はない。Sさんの母親は結婚を機に上京しており、叔父の一家も別に自宅があるため、その建物は貸家として30年以上前から母の友人である70代の老夫婦に貸している。数年前からその老夫婦には「将来的には売却したいのでその時は立ち退いてほしい」と伝えていて、了解してもらっている。元実家の土地を売却すれば2,000万円ほどにはなるとSさんは思っている。
■ 家庭裁判所で検認された遺言書があるから大丈夫なはずが…
  元実家の相続登記も無事に終わったSさんは、以前から売却に好意的な叔父の相続人の1人である叔母(L子)に「手続きも終わったことだし、そろそろ売却したい」と伝えた。Sさんは、土地の共有者が叔父の名義のままであることを気にしていたのだ。叔母も高齢ということもあって、この件に関しては叔母に代わって長女のMさん(Sさんのいとこにあたる)が面倒をみることになっている。
  叔父からの相続登記が終わっていないことをMさんに再度確認してみると、「そのことは承知しているが、家庭裁判所で検認された遺言書があるからいつでも登記できるから大丈夫」と答えた。遺言書は亡くなった叔父の仏壇にしまってあるとのとこと。元実家の土地の名義は共有と言っても叔父の持ち分は10分の1である。10分の1といっても売却後の金額に換算すれば200万円ほどにはなるのでMさんも売却には協力的だ。
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