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遺伝性がんと遺伝子検査の現実
ファイナンシャル・プランナー 黒田 尚子
  5月上旬、ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリー(以下、アンジー)が受けた予防的乳房切除に関する報道が、日本でも非常に大きな反響を呼んでいます。
  もちろん、乳がん患者である私は、米国でこのような予防的措置が行われることを知っていました。例えば、母親が乳がんに罹患した場合、その娘などに対して発病前の健康な乳房を切除してしまうというのです。これを聞いた当初は、「将来がんになるかどうかも分からないのに…」と驚きましたが、死ぬよりもおっぱいを失くす方がマシという考え方は米国らしいのかも、と納得したものです。
  ところが今回の報道を一緒に観ていた夫は、どうも納得しません。「どうして?がんになる確率が高くても、検診とかコマメにしていれば大丈夫じゃないの?!」―おそらくこれが一般的な人々の感想なのでしょう。
  今回は、遺伝性がんや遺伝子検査の現状などについて、セールスパーソンが知っておきたいポイントについて考えてみたいと思います。
●  遺伝性がんとは?
  がんは生活習慣に起因するものと遺伝によるものがあります。
  一般的ながんは、全体の9割が50歳以上など中高齢で発症し、そのおもな原因として喫煙や飲酒、運動不足などの生活習慣が挙げられます。このようながんに対する予防としては、生活習慣の改善やがん検診が有効です。
  これに対して遺伝性がんは、@若い年齢で発症する、A複数の部位に繰り返し発生する(多重がん、多発がん)、B家族に同じようながんが認められる、などの特徴があります。
  この場合、通常のがん検診だけでは、早期発見や早期治療が難しいのが現実。なかでも「BRCA1」および「BRCA2」という遺伝子に変異がある人は、アンジーのように乳がんや卵巣がんになる危険性が高くなります。このような「遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)」の患者は、乳がん全体の5〜10%を占めるといわれています。
  また、遺伝子検査で将来の発症リスクを把握できる遺伝性がんは、乳がんや卵巣がんだけではありません。次ページの図は、特定の遺伝子の変異などによって発症リスクが高まるといわれる「遺伝性腫瘍」の例です。
  これを見ると、乳がんや卵巣がんと同じ遺伝子の変異などが原因となりうるものとして、前立腺がんや膵臓(すいぞう)がんがあります。
  遺伝子は、父と母それぞれから受け継いだもの2つが1対になり、変異のある遺伝子が次世代に引き継がれる確率は50%。すなわち、父が前立腺がんだった場合、その娘が遺伝性の乳がんや卵巣がんを発症する可能性が高いと考えられるわけです。
  なお、すべての遺伝性がんを総合的に調べる遺伝子検査はありません。気になる場合は、それぞれ個別に検査をしなければならない点も知っておきましょう。
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