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予防的乳房切除を巡る問題点と民間保険の関係
ファイナンシャル・プランナー 黒田 尚子
  今月も前回に引き続き、遺伝性がんについての話題です。
  女優アンジェリーナ・ジョリーが予防的乳房切除を「告白」して2ヵ月が経とうとしていますが、遺伝性がんに関する関心は続いており、大学病院等の遺伝子診療部などへ「親族が乳がんを発症した。遺伝子検査をしておくべきか」など、乳がんに関する遺伝子検査への問合せが後を絶たないそうです。乳腺外科の医師からも、乳がん診断を受けた患者さんから、「遺伝子検査をしておいた方が良いでしょうか?」と頻繁に質問を受けるようになったと聞いています。
  前回は、遺伝性がんや遺伝子検査の現状などについて述べましたが、今回は、遺伝子検査や予防的乳房切除など遺伝性がんに対する治療が抱える問題点、そして遺伝性がんと民間保険との関係など、セールスパーソンが知っておきたいポイントについて考えてみたいと思います。
●  遺伝子検査や予防的乳房切除を巡るさまざまな問題
  今のところ、いくつかの病院で、予防的乳房切除など遺伝性がんに対する治療体制を整えている段階ですから、国内の遺伝性がんの治療はまだまだ現実的とは言えない状態です。
  そして医療を受ける私たちも、がん治療に対する選択肢が増えたことを喜んでばかりもいられません。自分のみならず家族にも大きな影響を与える遺伝子検査は、安易に受けるべきものではないからです。
  そもそも、米国で遺伝子検査が普及しているのは、がん治療にかかる自己負担額が、日本に比べ格段に高いという事情があります。
  日本では、国民皆保険制度によって全国どこでも平等な医療が受けられますが、米国では、保険会社などが提供する個々人で加入するタイプの保険しかないため、契約内容によってはカバーされる検査や治療が異なるのです。つまり、米国では、乳がんになってから治療を受けるよりも、予防的乳房切除を行って乳房再建をした方が割安だと判断する人が少なくないのでしょう。
  日本における予防的乳房切除に対する問題として、まず国内に体制が整っている病院がない以前に、公的保険が適用されないことが挙げられます。
  なぜなら、予防的乳房切除は、発症前の治療ですから保険診療と認められず、術後の定期的な検診も含め、全額自己負担となります。もちろんその前に受ける遺伝子検査も自由診療で、通常20万円程度かかるようです。
  さらに、遺伝子検査で陽性と分かっても、すべての人が乳房切除等を行うわけではありません。「(乳房を)とらない」という選択肢を選んだ人のココロとカラダのケアを、誰が、どのように行っていくのか、ということも考えるべきです。
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