Home > 医療・介護・相続等の現場 > 生保セールスが知りたい!相続・事業承継の「実際」

第1回
クリニックの承継@ 〜医療法人の場合(前編)
(株)FPスピリット 代表取締役/CFP®・行政書士 鈴木 克昌
  相続や事業承継の現場で直面する実際の手続きや見落としがちな点などについて、FPであり行政書士でもある鈴木克昌さんに、生保営業パーソンが知っておきたいポイントや事例などを交えて解説いただく新連載がスタートします。第1〜第4回はクリニックが舞台となる予定です。
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  病院やクリニックの相続においては、相続人が医師でなければ、医業を承継できません。よって、相続と事業承継は密接な関係がある一方で、個別の問題であるという側面も持っています。また、医療法人による経営の場合と個人開業の場合とでは、状況は大きく異なります。今回は、まず医療法人の相続について、平成26年度税制改正大綱に盛り込まれた「医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予等の創設」を含めてお話しします。
■ 持分あり医療法人の理事長には相続税対策が必須
  医療法人には社団と財団がありますが、全医療法人の99%以上が社団です(平成25年3月末現在)。社団医療法人は、出資持分のある医療法人(持分あり医療法人)と出資持分のない医療法人(持分なし医療法人)に区分されます。平成19年施行の第五次医療法改正により、持分あり医療法人の新規設立はできなくなりましたが、既存の持分あり医療法人については、経過措置として当分の間存続することが認められており、これらは経過措置型医療法人とも呼ばれています。経過措置型医療法人は、社団医療法人の約87%を占めています(平成25年3月末現在)。
  出資持分には社員※1 の退社時の払戻し請求権、法人の解散時の残余財産分配請求権があることから、株式会社の株式と同様の経済的価値を有する財産権とみなされ、定款で制約がない限り譲渡性が認められるとともに、相続税・贈与税の課税対象となります。
  医療法人が病院やクリニックの土地・建物を所有している場合は、その不動産の評価額が出資持分の評価額に反映されます。また、不動産を所有していなくても、医療法人は剰余金の配当が禁止されているため、多額の内部留保が蓄積している場合が多く、その結果、出資持分の相続税評価額はかなり高額となる傾向があります。
  多くの場合、創業者である理事長※2 が出資持分の大半を所有していますので、理事長の相続が発生した際に多額の相続税負担が生じ、それが医業の継続を困難にしてしまうこともあります。したがって、持分あり医療法人の事業承継に際しては、出資持分の相続税対策が重要な課題となります。
※1 株式会社でいうところの株主にあたる。
※2 株式会社でいうところの代表取締役にあたる。
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