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第2回
クリニックの承継A 〜医療法人の場合(後編)
(株)FPスピリット 代表取締役/CFP®・行政書士 鈴木 克昌
  今回は、医療法人における事業承継対策と相続対策について分けて解説していきます。別物として捉えられるようになるためには、まずは医療法人のしくみから理解することが必要です。
■ 医療法人に同族経営が多い理由は…
  医療法人が運営しているクリニックを承継するということは、すなわちその医療法人を承継するということです。社団医療法人(以下、単に「医療法人」といいます)の承継において、相続の対象となるのは「出資持分」です。一方、医療法人の代表権を持つのは理事長のみであり、クリニックには管理者(院長)を置くことが求められます。
  創業者である理事長は、通常、管理者も兼ねており、併せて出資持分の大半を保有しています。しかし、この理事長が亡くなったときには、出資持分と理事長・管理者の地位を、すべて同一人が承継するとは限りません。

  理事長は、理事の中から理事の互選(または理事会の決議)によって選ばれます。医療法人の理事は、会社で言えば取締役に当たり、通常は社員総会で選任されます(理事の人数は原則として3名以上で、管理者は必ず理事となります)。社員総会は株式会社の株主総会に相当します。ただ、株式会社では、出資者=株主であり、議決権の数が保有株式数に比例しますが、医療法人においては、出資額と議決権に関係はなく、社員は全員が各1個の議決権を有します。しかも、出資者=社員ではなく、出資持分を持たない社員も存在しますし、社員でない出資者も存在します。
  株式会社では、株式の過半数を保有することが経営権の支配につながりますが、医療法人では、社員の過半数の意思が経営を支配します(社員の人数は3名以上であることが求められます)。その結果、多くの医療法人において、社員と理事を親族が占める同族経営が行われています。
  一方、出資持分は医療法人とクリニックのオーナーシップを意味します。特に医療法人がクリニックの建物や土地を所有している場合は、オーナーシップの意義が大きいと言えます。出資持分は議決権とは関係がありませんが、医療法人の経営に関与していない者が出資持分を持っても意味はなく、払戻請求権を行使されて医療法人の経営に支障を来すことにつながりかねませんので、出資持分は経営陣が保有することが経営の安定につながります。
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