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第4回
クリニックの譲渡
(株)FPスピリット 代表取締役/CFP®・行政書士 鈴木 克昌
  クリニックにおいて、親族に後継者(医療法人の理事長または個人経営の開設者)となる者がいない場合は、クリニックの譲渡を考えることになります。クリニックの譲渡には、事業(医業経営)を譲渡するケースと、クリニックという施設だけを譲渡するケースがあります。
■ 医業経営ごと譲渡する場合
  医業の経営を譲渡することは、患者を引き継いで診療を継続することを意味します。ここで重要なのは、診療の空白期間を作らないことです。そのためには、保険診療が継続しなければなりません。前回お話ししたように、保険医療機関の開設者が変更になっても、患者が引き続き診療を受けている場合には、保険医療機関の指定を遡及して受けることができます。
  ただし、クリニックの廃止と新規開設がほぼ同時に行われる必要があるため、開設者である前院長(または医療法人の理事長)が亡くなってから譲渡先を探しているようでは間に合いません。クリニックに勤務医がいれば、その医師に経営を譲渡するのが最も一般的でスムーズな形と言えます。この場合は、その医師が実質的な後継者となります。
  後継者となる勤務医がいない場合は、外部に後継者を求めることになります。この点は、士業事務所の承継などでも同様ですが、クリニックの場合には、個人が複数のクリニックの開設者を兼ねることができないため、外部の後継者(=譲渡先)をみつけるのは容易ではありません。
  また、保険医療機関の指定手続きを要するという、他の業種とは異なる特殊性がありますので、譲渡先は開設者の存命中に決定して準備を整えておくことが望まれます。場合によっては、開設者の生前に後継者へ事業を譲渡しておくことも考えられるでしょう。
  複数のクリニックを運営する医療法人においては、理事長の存命中に、勤務医である院長が独立してクリニックの経営を譲り受けることがあります。その時点で、開設者が医療法人から院長個人に変わりますが、これは一種の暖簾分けのようなものと言えます。医療法人がすべてのクリニックの経営を譲渡する場合も同様ですが、その後に医療法人は解散手続きを行うことになります。
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