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第5回
医療法人の譲渡〜M&Aの場合
(株)FPスピリット 代表取締役/CFP®・行政書士 鈴木 克昌
  個人経営のクリニック・病院を譲渡したときは開設者の変更に当たり、そのクリニックや病院は必ず廃止と新規開設の手続きを行うことになります。また、土地・建物も併せて譲渡する場合は、個人に不動産の譲渡所得が発生します。しかし、法人経営のクリニック・病院を譲渡する場合には、個人とは異なる複数の譲渡方法があります。
■ 病床数拡大を目的にM&Aを行うケースも
  近年、病院のM&Aが増えています。その背景にあるのが、基準病床数制度です。病院については、都道府県が策定する医療計画の中で、病床の種類ごとに、厚生労働省の定めた基準に従って一定の範囲(医療圏)における病床数の上限(基準病床数)が定められています。圏内の既存の病床数(診療所の病床数も含む)が基準病床数を超える場合は、原則として病院の新規開設や増床が許可されないことになっています。そのため、病院のM&Aには、買収する側にとっては病床数の取得という意味もあります。
  法人経営の病院を譲渡する方法としては、@医療法人の合併、A事業譲渡、B医療法人の譲渡、という3つの形態が考えられます。
■ 医療法人の合併
  病院の現開設者と譲渡先がともに医療法人である場合は、医療法人の合併によって、病院を含む被合併法人の資産を合併法人へ引き継ぐことができます。医療法人の合併については、医療法に規定があり、これまでは社団同士、財団同士の合併しかできませんでしたが、今年(平成26年10月以降)からは、医療法の改正によって社団と財団の合併もできるようになる予定です。
  医療法人が合併するためには、法人内部の手続きのほか、都道府県医療審議会の審議を経た上で都道府県知事の認可を受ける必要があります。また、法人税法上の非適格合併に該当すると、被合併法人の資産を時価で譲渡したものとみなされて、譲渡益に対する課税が発生します。このように、対外的な手続きがかなり煩雑になりますので、合併という手法はあまり用いられていないようです。
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