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遺言書の功罪
FP EYE 澤田朗FP事務所 代表/日本相続士協会 理事 澤田 朗
■ 公正証書遺言のメリットと作成方法
  自分の直筆で作成するのが「自筆証書遺言」で、費用もかからずその内容も自分以外に知られずに作成できる等のメリットがあります。しかし、文字が不明瞭で読めなかったり記載内容があいまいだった場合などには、その効力が無効になったり相続人の間でトラブルの原因となってしまうことがあります。個人的な意見ですが、「法的に」有効な遺言書を作成したい場合には、費用はかかりますが公証役場で公証人に作成してもらう「公正証書遺言」のほうが良いのではないかと考えます。
  公正証書遺言にはいくつかメリットがあり、相続発生後に家庭裁判所で検認を受ける必要が無いため、様々な相続手続きがスムーズに行えます。自筆証書遺言の場合は検認を受けねばならず、その手続きには1か月以上かかることが多いです。しかし、相続の開始があったことを知ったときから相続放棄は3か月以内に申述しなければなりませんし、準確定申告(納税者が死亡したときの確定申告)は相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内、相続税の申告は知った日の翌日から10か月以内に行うことになっています。それに対し検認で1か月以上の“ロスタイム”は影響が大きいと思います。
  また、公正証書遺言の場合はすぐに、自筆証書遺言の場合は裁判所の検認を経てから、その内容に基づき財産を相続することになりますが、遺言書で特定の相続人に特定の財産を渡す旨が記載してあれば、例えば不動産の場合、その相続人の印鑑証明等があれば相続登記が可能となります。それに対して遺言書が無く遺産分割協議を行った場合には相続人全員の印鑑証明が必要となり、その分手間と時間と費用がかかることになります。
  作成の手順として、まずは財産内容の把握をしてから遺言の具体的な内容をまとめます。行政書士等の専門家に依頼をすれば、打ち合わせのうえ原案作成も行ってもらえます。その後、公証役場で公証人に原案の内容を事前に伝え、確認・検討をしたうえで公正証書遺言の内容を固めていきます。これに前後して後日行う最終的な遺言作成の際に立ち合いが必要となる、証人を最低2人選定します。未成年者や、推定相続人などの利害関係者以外なら証人になることができます(適当な証人が見当たらない場合、知っている人に遺言の内容を知られたくない場合などは、公証役場で身元の確かな証人を有料で紹介してもらうことができます)。
  最終的な遺言作成の日程を決めたうえで、その日までに必要書類を集めます。必要な書類は財産の内容によって異なりますが、遺言者の戸籍謄本と印鑑証明書、財産に預貯金等金融商品がある場合には通帳のコピーや株式・投信等の時価がわかるもの、不動産がある場合には登記簿謄本と固定資産評価証明書等が必要となってきます。当日証人2人と共に公証人が読み上げる遺言の内容を確認し、それぞれが署名捺印を行い、公正証書遺言の完成となります。
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