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借地権の相続について
FP EYE 澤田朗FP事務所 代表/日本相続士協会 理事 澤田 朗
■ 旧法適用なら借地権者の権利が強い
  クライアントの1人に、ご自宅の隣地を他人に貸している方がいらっしゃるのですが、その「借地権」が設定されている土地に家を建てて住んでいる「借地権者」の方が先日亡くなりました。
  「借地権」とは、その土地を使用できる権利のことで、建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいいます。例えば土地を他人から借りて、そこに自分が所有する建物を建てて住んでいる人などは「借地権者」として、土地に対して一定の割合で「借地権」を保有していることになります。どれくらいの割合の借地権を保有しているかは、国税庁の「路線価図」で確認できます。借地権は財産の一つで、相続税の課税対象です。その財産の評価をするために国税局は毎年路線価図の借地権割合を更新しているのです。地域によって借地権割合は90%〜30%と様々ですが、一般的には地価の高い地域ほど借地権割合は高くなります。
  現在の民法では5種類の借地権が存在していますが、一般的に「借地権」というと「旧借地法、借地借家法第3条」に基づく借地権を指し、借地権者の立場や権利が非常に強固なものとなっています。その理由は、平成4年に借地借家法は改正されていますが、それ以前から設定されている借地権については、引き続き旧法が適用されるからです。
  (借地権の存続期間)
   第3条 借地権の存続期間は,30年とする。ただし,契約でこれより長い期間を定めたときは,その期間とする。
  土地を借りている代金として「地代」を払うのですが、その金額は安価な場合が多く、また借地権には期限がありませんので、半永久的にその土地を利用することもできます。言い換えれば土地を貸している人、いわゆる地主さんにとっては自分の土地であっても自由に使うことができない。けれども固定資産税等は負担しなければならず、地代も少ないという、非常にやっかいな資産であるケースが多くみられます。
  都市部など地域によっては固定資産税の数倍の地代をとれるところもありますが、クライアントの場合は地代と固定資産税がほぼ同額で、土地を有効に活用できていないという状況にありました。
  地主さん側から見ると、借地権が設定されている土地のうち自分が持っている権利部分を「底地」といい、その評価額は更地の場合の価格×(1−借地権割合)で算出できます。
  つまり、地主さんは自分の土地とはいえ、その全部の権利を持っているわけではなく、借地権者と権利を按分して保有していることになります。
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