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生命保険は特別受益に当たりますか?
FP EYE 澤田朗FP事務所 代表/日本相続士協会 理事 澤田 朗
  相続人のうちの1人だけ被相続人が加入していた生命保険の死亡保険金を受け取ったとしたら、その保険金は「特別受益」として相続財産に持ち戻して遺産分割しなければならないのでしょうか? 生命保険は特別受益に該当するか否か、遺産分割で揉めないための生命保険活用も含めて解説します。
■ 特別受益は相続財産に持ち戻される
  まずは、特別受益についておさらいしてみましょう。被相続人の生前に贈与によって、あるいは被相続人から遺贈によって特別な利益(特別受益)を受けていた者が相続人の中にいたとします。
  相続が発生して、その特別受益の分を考慮しないで被相続人の財産を遺産分割したとすると、特別受益を受けた相続人とそうでない相続人とでは受け取る財産の額に不公平が生じます。そこでこのような生前贈与や遺贈された財産がある場合は、相続発生時の財産に特別受益分の財産を加えた合計額をもとに各相続人の相続分を計算します。これを「特別受益の持ち戻し」といいます。
  特別受益には、「@遺贈」「A婚姻・養子縁組のための贈与」「B生計の資本としての贈与」の3種類がありますが、「家を建てる時に資金の一部を出してもらった」「海外留学や医学部の入学金・授業料など、他の相続人に比べて多額の資金を出してもらった」というようなBの贈与に該当するものが問題となるケースが多いようです。
  なお、相続税法における贈与財産の持ち戻しは相続開始前3年以内が対象ですが、遺産分割における特別受益の持ち戻しについては対象期限がなく、相続発生時の価額によって行うと民法で規定されています。
  なお、被相続人の意思として遺言で「特別受益の持ち戻しをしない」旨の表示をすることで、特別受益の持ち戻しをすることなく遺産分割を行うことも可能です。これも民法に「特別受益の持ち戻し免除」として規定されています。
  ただし、特別受益の持ち戻しの免除を行うためには、特別受益を受けていない相続人の「遺留分」を侵害しないことが前提となります、持ち戻しをしない旨の意思表示をしていても、遺留分の算定は特別受益分を財産に含めて行うことになりますので注意が必要です。
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