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相続した借地権の売買交渉について
FP EYE 澤田朗FP事務所 代表/日本相続士協会 理事 澤田 朗
  本連載の前々回「借地権の相続について」でも書きましたが、借地権者の方が亡くなると借地権は相続人に相続されます。この場合、地主さんにあらためて借地権者が代わったことを承諾してもらう必要は無く、借地契約を解消しない限り、借地権は代々相続されていくことになります。今回は、前々回の事例の続きを紹介します。
■ 相続のタイミングで借地権を買い取って借地契約を解消するケースも
  最近目にする事例として、借地権を相続した相続人はすでに自宅を所有している場合が多く、相続した家屋に引き続き住むというのは少ないように思えます。加えて長年借地権者(被相続人)が住んでいて家屋が老朽化しているケースが多くみられます。借地権が設定されている土地に建てられている家屋を取り壊し、新たに賃貸物件を建てる等の活用方法も考えられますが、その場合は地主の承諾が必要となり、さらに承諾料として更地価格の数%を支払うことになる場合が多く、費用負担が高額になるケースも多くみられます。
  自分が住むことの無い土地の借地権を相続した場合、そこに住んでいなくても地主に地代を払わなければなりませんので、借地権を相続したタイミングで借地契約を解消し、地主に借地権を相当額で売却をするケースも増えています。権利を手放す代わりにそれ相当の対価としてまとまった金額が手に入ることになります。
  一方地主側としては、借地契約を解消することで自分の土地として活用することができるので借地権を買い取りたいところですが、「それ相当の対価」が高額になるケースもあり、ここが悩みの種となります。借地契約を継続すれば地代の収入はありますが、借地契約を結んだのが何十年も前のことだと地代が少額の場合がほとんどです。それなら借地権を買い取って自分の土地として有効活用をしたほうが多くの収入を見込めますが、そのためにはまとまった費用負担をしなければならず、ここで地主と借地人の間で金額の交渉が行われることになります。
  逆に、借地権を相続した相続人に資力がある場合、新しい借地人のほうから「相当の対価」を負担して、地主側から土地を買い取るというケースもあります。つまり、地主からの要望で買い取るケースもあれば、借地人からの要望で買い取るケースもあるということです。
  いずれにしても借地権は、「買い取る義務」というものはありませんから、双方の話し合いにより「それ相当の対価」を決めたうえで、借地契約の解消が行われることになります。
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