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相続人は疎遠な甥姪ばかり!
「おひとりさま」の相続の問題点
佐川京子行政書士事務所 代表/ファイナンシャル・プランナー 佐川 京子
  国立社会保障・人口問題研究所の「人口統計資料集」によると、2010年時点の生涯未婚率は男性が20.14%、女性が10.61%。つまり男性は5人に1人、女性は10人に1人が一生独身を通すことになると推測されます。社会的にも認知されるようになった「おひとりさま」ですが、次第に年を取り、いつかは死を迎えます。そのとき配偶者や子どもがいないのはもちろんですが、身近な親族すらいない場合、おひとりさまの相続はどうなるのでしょうか。今回はトラブルになった事例と生前にしておきたい対策を紹介します。
※  生涯未婚率とは、50歳時点における平均未婚率で、おそらくこれ以降は結婚の予定がないと推測できることから生涯独身でいる人の割合を示す指標として使われており、生涯を通して未婚である人の割合を示すものではありません。
■ 家族がいない場合、誰が相続人になるのか
  山田幸子さん(86歳・仮名)は、地方都市のとあるマンションで1人暮らしをしていました。縁に恵まれず生涯独身でした。子どもはおらず、両親はとっくに他界しています。幸子さんは4人兄弟(姉、兄、妹、弟)でしたが、皆すでに亡くなっており、身近な親族は1人もいませんでした。
  生活費は年金が頼りのため、ぜいたくはせずに暮らしており、住まいは、幸子さんの弟が所有していたマンション棟の1室で、弟の厚意で無償で住まわせてもらっていました。2年前、弟が亡くなりマンションは弟の妻が相続しました。現在の大家さんは義理の妹にあたる山田博美さん(76歳・仮名)ですが、引き続き家賃は払ってはいませんでした。博美さんはマンションから車で30分ほどの距離にある一戸建てに住んでいます。
  その博美さんが、久しぶりに幸子さんの様子を見に訪ねたところ、近所を徘徊している幸子さんを見つけました。病院で診察してもらったところ、幸子さんは認知症を発症していることが判明しました。幸子さんの兄弟姉妹はすでに全員亡くなっており、それぞれの配偶者は存命ですが、皆高齢であるため相談事を持ちこむのはためらわれました。そこで博美さんは同じ市内に住む兄の子――幸子さん・博美さんの甥である山田隆さん(60歳・仮名)に連絡をとり、幸子さんのことを相談しました。
  その結果、幸子さんに後見人(成年後見制度)をつけることになり、隆さんが家庭裁判所で手続きにかかりました。そんなある日、幸子さんが1人で外出したときに自転車とぶつかり転倒。頭を強く打ったことが原因で亡くなってしまいました。
  繰り返しになりますが、幸子さんには配偶者や子どもはおらず、両親や兄弟姉妹はすでに他界しています。この場合、代襲相続となるため、隆さんを含めた甥姪6人が相続人になりました(姉の子が2人、兄の子=隆さん、弟と博美さんの子(弘さん)、妹の子2人)。このうち4人は全国にちらばり、1人は海外で暮らしています。6人とも皆20年以上、幸子さんと関わりがありませんでした。
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