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義父母の介護に長年尽くしてきたのに…
“長男の嫁”の貢献度は評価されないの?  前 編 
佐川京子行政書士事務所 代表/ファイナンシャル・プランナー 佐川 京子
親の介護負担も、親から相続する財産も子どもたちそれぞれが同じだけなら不平不満は生じませんが、現実はなかなかそうはいきません。いざ相続が発生すると、「舅姑の面倒を見るのは長男の嫁(あるいは同居している子)の義務」「兄弟姉妹の相続分は同じだから財産は平等に分けるべき」というような主張が、介護には知らんぷりしていた兄弟姉妹から出て遺産分割協議が難航する、あるいは協議後に感情的なしこりが残ってしまうことがけっこうあります。今回はそのような状況に至ったケースを紹介した「前編」と、それに対するアドバイスを解説した「後編」(11月27日更新)の2回に分けて掲載します。
■ 舅の自宅介護、頼りになるのは長男の嫁だけ
  地方都市の一戸建てで悠々自適の生活をされていた北本大介さん(登場人物はすべて仮名・以下同様)は、73歳のときに脳梗塞で倒れ、一命は取り留めましたが、右半身マヒが残り要介護3の状態になりました。
  大介さんの妻・北本喜代さん(73歳)は、偏頭痛と腰痛の持病があったので、ヘルパーさんに来てもらい、自宅で大介さんの介護をしていました。
  じつは大介さんと喜代さんの間には3人の子ども――長男の北本陽介さん(47歳)、次男の北本幸介さん(44歳)、長女の川田美代子さん(41歳)――がいましたが、誰とも同居していなかったので、喜代さんは子どもたちを頼りにしないで大介さんの介護をはじめたのです。
  しかし1ヶ月くらい経ったころからヘルパーのやり方が気に入らなくなり、違うヘルパーに代えてもらいましたが、その人ともうまくいかず、結局、喜代さんはヘルパーの利用はやめてしまいました。
  長男の陽介さんは、「1人で介護をするから大丈夫」と母親が言っていたものの持病のこともあり、そのうち母まで倒れてしまうのではないかと心配になりました。そこで、陽介さんは弟と妹に連絡して、「母が心配だから父の介護の手伝いをしよう」と提案しました。
  陽介さんは両親の自宅(実家)から車で40分離れたところに、妻の紀子さん(37歳)と子ども(小学生)と暮らしていましたので、介護に通うことは可能でした。弟の幸介さんはまだ独身でしたが、転勤で遠方にいるため介護に通えない状況でした。
  一方、妹の美代子さんは車で1時間30分離れたところに、夫と就学前の子ども2人と暮らしていましたが、元々母娘間の折り合いが悪かったためなのか、「子どもの面倒で時間が取れない」ことを理由に、母親の手伝いを拒否。陽介さんは、弟も妹も当てにできないとあきらめる一方で、2人とも自分勝手で役に立たないと苦々しく思う面もありました。
  陽介さんは母親に弟妹の状況を話したところ、幸介は遠方だから仕方ないと割り切っていましたが、妹と母親は10年以上関係がよくなかったせいか、「美代子には手伝ってもらわなくてもいい!」と強い口調で話していました。
  そこで陽介さんは仕方なく、妻の紀子さんに、「父親の介護を手伝ってもらえないか」と相談しました。紀子さんは家計の助けとしてパートに出ていたので、パートと家事の合間にできる範囲で義母を手伝うことにしました。
  長男の嫁である紀子さんは、姑である喜代さんと二人三脚で、舅である大介さんの介護をしていましたが、介護を始めてから4年くらいたったころから、大介さんの状態が悪くなりほぼ寝たきり状態になってきました。そうなるとパートと家事の合間だけでは手が足りず、紀子さんは仕方なくパートをやめて、介護の手伝いに本腰を入れることになりました。
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