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せっかく作った遺言がのちのちの火種になるなんて…
土地を共有名義にするような相続はさせないこと!
佐川京子行政書士事務所 代表/ファイナンシャル・プランナー 佐川 京子
故人の思いを伝える方法の1つに遺言があります。しかし、相続に関して正しい知識がないと、その遺言がもとで、あとあと相続人の間でもめごとが起こることがあります。特に、相続財産が不動産の場合、共有名義で相続させてしまうと、争いごとのタネになる可能性が高いのでお勧めできません。
■  父親の遺言通りの遺産分割に兄弟が納得
  趣味の俳句や囲碁、旅行などを仲間と楽しんで悠々自適の生活をしていた杉田雄三さん(仮名・80歳)が、ある日、急性心筋梗塞で倒れて、亡くなりました。
  雄三さんは、5年前に妻を亡くしており、その後に、公正証書遺言を作っていました。遺言の主な内容は、自宅(以下、「実家」とする)の土地と建物を長男の杉田竜也さん(仮名・57歳)と次男の杉田勇次さん(仮名・55歳)で2分の1ずつ。預貯金を長男の竜也さんが3分の2、次男の勇次さんが3分の1で相続させるというものでした。
  遺言には、「兄弟で先祖代々の実家の土地(建物を含めた評価は時価約2,300万円)を守ってほしい。お墓は長男に守ってほしいので、次男よりも預貯金を多く分けた」と書かれていました。預貯金は約1,500万円あり、遺言通りに分けると、長男の竜也さんが約1,000万円、次男の勇次さんが約500万円になります。
  勇次さんは、お寺での法事などにお金がかかることを知っていましたし、面倒なことは兄の竜也さんがやってくれるからと遺言に書かれた金額に納得しました。
  また、雄三さんは生命保険に加入しており、死亡保険金300万円の受取人は竜也さんでした。生前、雄三さんは竜也さんに「生命保険をかけているので、そこから葬儀費用を出してほしい」と伝えていました。死亡保険金は、葬儀費用、戒名代や読経のお布施、お墓への納骨費用などに使い、ほとんど残りませんでした。
  雄三さんの子どもたちは2人とも結婚しており、各々持ち家がありました。なお、長男の竜也さんには子どもが2人、次男の勇次さんには子どもが3人います。
  竜也さんと勇次さんは、遺言通りに相続した土地を持分2分の1ずつの共有名義で登記し、固定資産税はそれぞれ2分の1ずつ払うことにしました。
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