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余命宣告にふりまわされないための準備
佐川京子行政書士事務所 代表/ファイナンシャル・プランナー 佐川 京子
末期がんを発症した親に余命を告げるべきか、子どもとしては悩むところです。今回の事例は、自分の余命があとわずかと悟った方がエンディングノートを書き、それに基づいて1人でこっそり行動したため、皮肉にも予想外に早く亡くなることになってしまいました。このケースではエンディングノート本来が持っている機能を十分に発揮できませんでしたが、本稿ではノートを書くタイミングや書いておきたい内容についてお伝えします。
■  がんの告知にショックを受ける
  今まで病気らしい病気をしたことがなかった佐々木陽子さん(仮名・86歳)は、最近調子が悪いことが多いので近所のクリニックで診てもらいました。腸の病気だと告げられ、精密検査を受けたほうがいいと大病院を紹介されました。陽子さんは1人で検査を受けに行くのが不安だったので、娘の町田由紀さん(仮名・49歳)につきそってもらいました。検査の結果、大腸がんと診断されました。
  もともと便秘気味であった陽子さんは、痔による出血だと長い間気にも留めていなかったことを後悔しました。担当医から治療法の説明がありましたが、ショックのあまりほとんど覚えていない状態でした。本人に病名は告知したものの、実は、このまま治療をしなければ余命は1年くらいという話が、由紀さんにだけ伝えられました。由紀さんもかなりショックを受けました。
  大腸がんと知ってショックを受けている陽子さんは、気落ちして食事が喉を通りません。由紀さんは、その様子を目にして、陽子さんに余命を知らせたほうがいいか迷いましたが、治療すれば余命が延びると思い、様子をみてからにしました。治療法は本人が手術を嫌がったので、抗がん剤のみで行うことになりました。
  陽子さんは大腸がんと診断されてから、テレビや雑誌などでがんを取り上げていると片っ端から目を通していました。ある日、テレビで余命宣告を受けた大腸がんの人の体験談を聞いたときに、自分も似たような症状があることから、担当医や娘は触れないけれど、もしかしたら余命は短いのかもしれないと感じました。自分から余命を聞きたくないし、女性の平均寿命まで生きられたし、孫も社会人になっているし、いつお迎えが来てもいいか――と陽子さんは次第に思うようになりました。
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