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もしものときに備えたペットへの思いは
予想外の展開に
佐川京子行政書士事務所 代表/ファイナンシャル・プランナー 佐川 京子
ペット好きの高齢者がよくこのようなことを口にされます。「以前はペットにワンちゃん(猫ちゃん)を飼っていたのだけど、もう私(私たち夫婦)も年だから、ペットだけのこされたら可哀そうで飼えないのよね。本当はまた飼いたいんだけど…」今回の事例は、飼い主亡き後のペットの行く末について取り上げ、生前にできる対策を考えてみます。
■  愛犬の行く末を案じ、貯金まで用意したのに…
  5年前に夫を亡くした上村節子さん(仮名・80歳)は、1人暮らしに寂しさを感じ、3年前から家の中で犬を飼っています。今ではペットがいない生活なんて考えられなくなりました。
  そんなある日、節子さんは、ペット仲間のみどりさん(仮名・75歳)が、自宅で心筋梗塞で急死したことを聞きました。ペットの犬が鳴き続けていたのを隣の人が不審に思い、訪問したところ、発見されたということでした。ペットは引き取り手がなく、保健所にもって行くことになりました。
  節子さんはみどりさんと同じ1人暮らしなので、自分が亡くなったときの愛犬の行く末を考えるようになりました。そこで、ときどき訪問してくれる姪の岩田良美さん(仮名・45歳)にペットのことを相談してみたところ、良美さんは、「叔母さんが亡くなったら、ペットを引き取ってもいい」と約束してくれたので、節子さんは安心しました。良美さんは、以前から犬を1匹飼っており、もう1匹増えても大丈夫と思い、引き受けたのでした。
  節子さんは、姪が面倒をみてくれるのに、タダでは申し訳ない。餌代や医療費もかかるだろうから、自分の貯金を愛犬に残しておこうと思い、良美さんに「私が亡くなったら、『ペット用』と通帳に書いてある貯金を使ってね」と伝えておきました。
  3年後、節子さんは肺炎になり、1年にわたって入退院を繰り返しましたが、亡くなりました。節子さんの相続人は、弟と妹の2人。相続財産は、自宅800万円、貯金300万円。ほかに生命保険金が100万円(受取人は弟)ありましたが、これは、お葬式代に使ってほしいと生前に弟が頼まれていたので葬儀代として使いました。自宅は売却して現金化し、弟妹で半分ずつ分けました。
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