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生前も、遺言も長男ばかりえこひいき!
親の不公平な扱いが原因で揉めた相続
佐川京子行政書士事務所 代表/ファイナンシャル・プランナー 佐川 京子
親としてはどの子、どの孫に対しても思いは変わらないし、同じようにかわいいものでしょう。しかし、受け止める側では感じ方が大きく違うことがあります。長男だから、初孫だから、同居しているから……親の扱いに不公平感がたまっている子どももいるでしょう。子どもは親が生きている間は、波風は立てたくないという思いもあり、親に面と向かって不平不満を言う人はあまりいません。その代わり、親が亡くなった後で、押し殺していた思いがあふれ出てきて、それがもとで相続が揉めることはよくあることです。
■  同じ病で亡くなるほどのおしどり夫婦
  岡山明さん(77歳)と紀子さん(80歳)は、自他共に認めるおしどり夫婦でした。末永く一緒に暮らしたいと思っていた明さんにとって、先に紀子さんが亡くなったことは予想外のことでした。
  妻の死に大きなショックを受けている父親を子どもたち(長男の岡山昭雄さん=47歳、長女の新井香さん=42歳)が気にかけ、長男の妻(岡山加奈さん=47歳)と長女が協力して、食事などの世話をすることにしました。そして、孫たちも毎週のように実家の明さんを訪ねるうちに、明さんは少しずつ元気を取り戻していきました(登場人物はいずれも仮名)。
  紀子さんが亡くなってから1年くらいたつと、明さんは地域の書道サークルや高齢者の男性向けの料理教室に通うなど、生活を前向きに楽しむようになっていました。長男夫婦も長女もその姿を見て安心しましたが、持病はないとはいえ、1人暮らしは心配だったので、長男と長女が交代で、週末に実家を訪れ明さんの様子を窺うようにしていました。
  そんなある日、明さんの風邪がなかなかなおらず、病院に行ったときには、肺炎という診断をされたため、入院をして治療をしていましたが、2週間後に81歳の生涯を閉じました。4年前に亡くなった紀子さんと同じ肺炎が死因でした。
■  納骨後の会食で出た遺言の話
  葬儀は先祖代々お世話になっているお寺で行い、納骨も無事に済ませたあと、会食の場で長男の昭雄さんから父親(明さん)の遺言の話がありました。長女の香さんは、遺言があることを初めて知り、驚きました。昭雄さんは、遺言の内容通りに明さんの財産を分けたいというのです。
  実は、明さんは、妻が亡くなったショックから立ち直った後に遺言を作っていたのです。そして、遺言を書いたこととその内容を長男にだけ話していました。昭雄さんは会食の場には遺言書を持参していなかったので、香さんは後日、遺言書を見せてもらうことにしました。
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