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過敏性腸症候群
株式会社ASSUME 代表取締役/査定医 牧野 安博
  入学・進学・入社・転勤・引っ越し……新年度は新しいことが始まるわくわく感と同時に、不安感も伴う季節ではないでしょうか。通勤・通学中、あるいは大きな商談の前に急にお腹が痛くなってトイレに駆け込むようなことはありませんか。一度きりならいいのですが、大事なシーンの前になると便秘や下痢による腹痛を繰り返す人は、「過敏性腸症候群」かもしれません。
■ 疾病概念・原因
  過敏性腸症候群とは、主として大腸の運動および分泌機能の異常により下痢や便秘、ガスの貯留などを繰り返し起こす病気です。以前は大腸の機能異常による病気として「過敏性大腸症候群」と呼ばれていましたが、小腸も関係することが分かり、最近では「過敏性腸症候群」と呼ばれています。
  検査をしても炎症や潰瘍など、目に見える異常が認められないにもかかわらず、下痢や便秘などの便通異常、ガス過多による下腹部のはりなどの症状が繰り返し起こります。潰瘍とは、粘膜などの表層がただれて崩れ落ち、欠損を生じた状態のことです。脳と腸は密接な関係にあり、脳が強烈なストレスを感じると、腸のぜんどう運動の異常をきたし、症状となって現れます。生活環境の問題なども原因と考えられていますが、はっきりした原因はいまだ不明です。
■ 疫学・症状・経過
  過敏性腸症候群は、自律神経失調症と関係があり、几帳面な人、神経質な人、緊張しやすい人、精神的ストレスを感じやすい人がなりやすいと言われています。日本人では10〜15%にみられ、男女比では男性47%、女性53%と女性に若干多くみられますが、2005年に約46万人だった男性患者数は2012年には約97万人と約2倍に急増しています。年代別では思春期から増え始め、20代〜30代にかけて女性患者が増加していきます(株式会社日本医療データセンターの過敏性腸症候群の医療統計データ分析による)。
  過敏性腸症候群はその症状により3つに分類されます。緊張や不安に伴い突然襲ってくる便意と下痢の症状が特徴の「下痢型」、うさぎの糞のようなコロコロとした便と残便感が特徴の「便秘型」、下痢と便秘を交互に繰り返す「交替型」です。症状がひどくなると、急に起こる便意が不安で外出が困難になったり、眩暈や動悸などの自律神経失調症状などを起こし、日常生活に支障をきたすようになります。
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