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橋本病
株式会社ASSUME 代表取締役/査定医 牧野 安博
  前回は甲状腺機能亢進症の代表であるバセドウ病について解説しましたが、今回は最終的に甲状腺機能低下症の症状をきたす、慢性甲状腺炎ともよばれる「橋本病」について解説します。橋本病の名前は、九州大学の橋本策博士が1912年に世界で初めてこの疾患に関する論文を医学誌に発表したため名づけられました。
■ 疾病概念・原因
  甲状腺は頸の前、喉仏の下あたりにある、蝶が羽を広げたような形をした臓器で、甲状腺ホルモンを産生しています。甲状腺ホルモンは人が生きていくのに必要なホルモンで、細胞の新陳代謝を調節したり、身体を元気にしたり、子どもが成長・発達していくのに必要です。
  橋本病は、甲状腺に慢性の炎症が起きる疾患です。
  本来は自分の身体を守るべき免疫が、自分の身体に反応して組織を攻撃することで起こる疾患を「自己免疫疾患」と言いますが、橋本病はこの自己免疫疾患の1つです。自分のリンパ球が甲状腺を異物とみなして破壊することで炎症が起き、徐々に甲状腺機能が低下します。自己免疫疾患の原因はわかっていません。
■ 疫学・症状・経過
  他の甲状腺疾患同様に女性に多くみられ、男女比では1:20〜30、年齢別では中年以降に多く見られ、中年女性の10人に1人は橋本病とも言われています。
参考: 伊藤病院HP「甲状腺の病気について(橋本病)」
  全身がエネルギーを利用できない病態なので、非常に多彩な症状が起こります。
   ・全身症状 寒がり・嗄声(させい)・易疲労感・脱力感・体重増加・食欲低下・便秘・動脈硬化
   ・精神症状 無気力・記憶力低下・集中力低下・緩慢な動作・認知症・難聴
   ・皮膚症状 皮膚乾燥・発汗減少・黄色皮膚・脱毛・眉毛減少
   ・循環器症状 心電図異常(徐脈・低電位)・浮腫・息切れ・心肥大・粘液水腫・貧血
   ・婦人科症状 生理不順・月経過多・不妊・易流産
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