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アトピー性皮膚炎
株式会社ASSUME 代表取締役/査定医 牧野 安博
  今年の夏も猛暑日が続き、言わないようにしようと思いつつも、人の顔を見るとつい「暑いですね」という言葉が突いて出てしまいました。アトピー性皮膚炎の方の中には、汗をかくことで痒みが増した方もおられる一方、秋の気配を感じると憂鬱な気分になられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回はアトピー性皮膚炎について解説します。
■ 疾病概念・原因
  アトピー性皮膚炎は、遺伝子変異などにより、先天的に皮膚のバリア機能が低下し、IgEというタンパク質を介したアレルギーを産生しやすい素因を基盤として起こる病気です。ハウスダスト・ダニ・花粉・真菌・食物など、様々なアレルゲン(抗原)や刺激に反応して起こる慢性・再発性の湿疹で、強い掻痒(そうよう)が特徴です。
■ 疫学・症状・経過
  アトピー性皮膚炎の発症率は10%強といわれています。乳児から成人までのアトピー性皮膚炎の経過をみると、小児の20%でアトピー性皮膚炎は消失します。アトピー性皮膚炎の多くは、乳幼児期に発症し、顔面から症状が出始め、次第に体幹に広がって湿潤します。小児期になると皮膚全体が乾燥して、肘窩(ちゅうか)、腋窩(えきか)などの四肢屈側が苔癬化(たいせんか)します。
  アトピー性皮膚炎は季節性があるといわれており、空気が乾燥する時期になるとドライスキンとなり痒みが強くなる冬に悪化するタイプと、気温の上昇で汗をかいたり細菌が繁殖して痒みが増強する夏に悪化するタイプがあります。症状の出現時期や程度は個人差がみられますが、いずれも症状が消失する寛解(かんかい)と増悪(ぞうあく)を繰り返します。近年は成人期に発症する症例が増えています。また、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎を合併する傾向にあります。
  その他のアトピー性皮膚炎の合併症としては、単純性ヘルペスウイルスによるカポジ水痘様発疹症、黄色ぶどう球菌や溶連菌による伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)〈とびひ〉、ポックスウイルスによる伝染性軟属腫などの頻度が高いです。またアトピー性皮膚炎の眼合併症として白内障や網膜剥離を起こすこともあります。
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