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遺言書は残したけれど
ファイナンシャル・プランナー 山田 静江
■ 子どものいない妻が残した遺言書の中身は…
  お子さんのいない夫婦の場合、どちらかが亡くなると、配偶者の親や兄弟姉妹が一緒に相続人になるため、遺産分割ではもめ事が起こりがちです。それを避けるためにも、遺言書はあった方が手続きはスムーズに進みます。
  しかし、どちらかが実家の事業の株式や土地家屋を所有している場合には、事情は複雑になります。○○家の財産が、配偶者の実家である△△家の親族が相続することになるからです。
  今回は、資産家ゆえに起こったトラブルをご紹介します。
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  斉藤ミツさん(享年87)は、夫である忠史さん(享年89)が亡くなった数カ月あとに、後を追うように息を引き取りました。斉藤さん夫婦の間には、子どもがおらず、それぞれ次のような内容の遺言書を残していました。
  忠史さんの遺言『財産はすべて妻であるミツに相続させる』
  ミツさんの遺言『財産は、兄弟および甥のうち、実家の姓(大野)を継いでいる者に、均等に相続または遺贈させる』
  忠史さんが亡くなったとき、忠史さんの直系尊属(父母、祖父母など)と兄弟姉妹はすべて死亡していたため、忠史さんの法定相続人は、6人の甥姪でした。甥姪には遺留分はないので、遺言書により忠史さんの財産はすべてミツさんのものになりました。
  一方、ミツさんの実家側の親族は、直系尊属はすべて亡くなっていて、兄弟姉妹で生存しているのは弟のみです。法定相続人は、弟と4人の甥、そして4人の姪です。しかし、ミツさんの遺言書があるため、実際に遺産を受け取れる人は、法定相続人の中で大野姓を名乗る男性である弟と3人の甥、さらに弟の息子も大野姓なので、遺言書により遺産を受け取る立場になります。
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