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第3回
『家族信託』の具体的な活用事例 1
司法書士宮田総合法務事務所 代表司法書士 宮田 浩志
  前回、『家族信託』と生命保険の共通点・相違点についてご案内させて頂きました。その中で、生命保険も家族信託も、“自分亡き後の大切な人に資産を遺すための仕組み”、言い換えれば“想い”を繋げる仕組みとして活用できるとご説明いたしました。
  本稿では、その具体的な事例についてご紹介したいと思います。
■  子供のいない夫婦と先祖からの資産承継
  筆者が相続・事業承継の事前対策に関する業務を数多くしている中で、子(兄弟)が複数いると、その中の一人は独身かあるいは結婚していても子供がいない夫婦が多いということを実感します。
  子供がいない夫婦にとっての“想い”や法的な問題点を含めて、次の事例を見てみましょう。
【事例】
  地主家系の長男である鈴木太郎さん(69)は、先代から相続した広い庭のある自宅、農地、駐車場、貸地、戸建賃貸、アパート、マンションなどを所有しており、今では不動産賃貸業が主たる収入となっています。
  妻の花子さん(68)との間に子供はおらず、太郎さんの法定相続人は、妻の花子さんと太郎さんの弟・次郎さん(65)です。
  太郎さんは、自分が妻よりも先に死んだら、不動産賃貸業を手伝ってくれている花子さんに賃貸事業及び資産を引き継ぎたいと考えています。しかし、次に花子さんが死亡すれば、先祖より代々守り抜いてきた鈴木家の主要な資産が花子さん側の親族(姻族)に承継される可能性がありますので、その点について何とか対策を講じておきたいと考えています。
  太郎さん・花子さんは、二人とも亡くなった場合には、鈴木家の後継者たる次郎の子・甥之助さん(36)に賃貸事業及び資産を遺したいと希望しています。
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