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中小企業におけるステージ別保険提案
1級ファイナンシャル・プランニング技能士 三井秀俊
企業のステージごとに保険提案は異なる
  企業を取り巻く環境にはさまざまなリスクが存在します。そのリスクは、いつ発生するのか予測できないものと、間違いなくある一定の時期に訪れるものに分類できますが、円滑な事業活動を維持していくためには、それらのリスクへの対策が重要です。
  中小企業には、「創業期→成長期→安定期→成熟期」といったステージがありますが、それらのリスクは企業のステージによって種類や内容が変わることから、リスク対策に活用する生命保険は各ステージにおける特性に応じたものを提案することが重要となります。本稿では、ステージの特性に応じた生命保険提案を解説します。
  ステージ分類でみる企業の成長過程については、例えば中小企業庁のホームページの「創業における経営課題と支援施策」のページに、「創業段階と経営課題の概観」や「創業段階と支援施策の概観」などの図表がありますから参考にしてみてください。
  (参照:http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/sogyo/essence/support_02.html
発展過程の企業の特性
  創業したばかりの中小企業は社長自身の手腕に全てがかかっているので、社長が死亡すると、たちまち会社は存亡の危機に晒されます。そのため「事業保障資金」の準備が最も重要になります。事業保障資金とは、社長に万一のことがあった場合に会社の存続を守るための資金(短期債務の返済や従業員の給与資金確保)です。
  また、創業したばかりの中小企業の場合、たとえ事業保障資金を生命保険で準備していても会社を存続することができずに廃業する企業も多く見られます。ただし、そのような場合でも事業保障資金準備としての生命保険があれば仕入先や銀行に迷惑をかけることもなく、職を失うことになる従業員に対しても1年間分の給与を退職金として支給することができます。
  一方、社長の死亡退職金は、創業したばかりの中小企業の場合は高額を支給すると税務当局に損金算入を否認される恐れがあります。なぜなら、役員退職慰労金は最終報酬月額に役員在任年数と役位別功績倍率(2〜3倍)を乗じて求める方法が一般的だからです。そのため死亡退職金の必要額は創業後の年数に応じて見直していくことになります。
  次に、成長期の中小企業の特性は、会社の成長に伴い売上高が増大すれば、短期債務の額も増大するため事業保障資金の見直しが必要になります。逆に成長期の中小企業は創業期に比べると社長の死亡が売上等に与える影響が少なくなることもあるため、事業保障資金の必要準備額を100%準備する必要がない場合もあります。
  とくに成長期の中小企業は工場や店舗を増やしていくことを優先しがちになるため、利益が出ているものの資金繰りに余裕が無く、保険料の増額に難色を示すケースもあります。そのような場合は、事業保障資金の考え方や必要性を十分に訴求することが重要になります。また、成長期の中小企業は、従業員数の増加に伴い、創業期には整備されていなかった従業員退職金制度や弔慰金制度が必要になってきます。退職金規程や弔慰金規程の雛型はその際のアプローチツールとなります。
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