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お客さんの方を向いて仕事をする
トップ営業マンの言葉づかい その@
有限会社T.S総合企画 代表取締役 津田 秀晴
  以前この連載に登場していただいた自動車セールスの鹿子島信夫さん(有限会社カー・リンケージ代表取締役)と、あるファミリーレストランでランチを兼ねて打ち合わせをしたときの話です。
  ランチといってもまだ11時頃でしたから、店内はだいぶ空いていたのですが、サービススタッフから「こちらでよろしいでしょうか?」と、ほとんど断定的に指示されたのは、2人用の狭いテーブル席でした。隣のテーブルとは、人が通るのも難しそうな隙間しかありません。
  店側は昼時の混雑を考えて2人客はそこに誘導すると決めているのでしょう。でも、こちらとしても大事な話をしたかったので、資料を広げられるテーブルで、隣との間隔にゆとりがあってプライバシーが守られる席に座りたい……という希望があったのです。
  そこで私が「申し訳ないけれど、できればあそこの4人掛けの席にしてほしいんですが…」と提案すると、その女性スタッフは顔を曇らせて、「ここに座って欲しいんだよなぁ…」とでも言いたげな様子を見せました。それからしぶしぶと、「じゃあ、いいですよ」と言ったのです。
  1人でも多くのお客さんを入れたい店の気持ちはわかりますが、あそこまで露骨に感情をあらわにされると、こちらも少々気分を害します。
  私が自分の気持ちを整理するために(なおかつ取材も兼ねて)、一緒にいた鹿子島さんに「今のやりとりを営業(接客)のプロの目から見るとどんなふうに感じますか?」と意見を求めると、鹿子島さんは穏やかな顔でこんなふうに言いました。
「言葉と態度にあれだけ出ているのは失敗でしょうね。ちゃんとしている店(営業マン)なら、腹が立っても絶対に相手に悟らせませんし、『じゃあ』という言葉も使いません。もし私がスタッフの立場だったら、『席を替わりたい』と言われた時点で、自分の顔色が曇らないうちに『はい、かしこまりました! こちらでいかがでしょうか?』と言って、頭をサッと切り替えます。2人用の席に座らせたいのは、あくまで店側の都合ですからね。私なら『2人とも荷物が多そうだし、なにか御都合があるのだろうな』と考えると思います」
  さて、このときのやり取りは私のわがままが悪いとしても、鹿子島さんの話をうかがって改めて感じたのは、《お客さんの方を向いて商売しているか、それとも会社や自分の方を向いて仕事をしているかどうかは、ちょっとしたときの態度に表れてしまう。そして、営業マンにとって言葉づかいは極めて重要で、よくよく熟慮されたものでなくてはならない》ということです。
  その実例として、鹿子島さんから、こんなお話をうかがいました。
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