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最近、《商談にふさわしい環境づくり》について考えさせられる機会がありました。
都内のあるカフェでお茶を飲んでいたときのことです。
午後の静かな時間が流れる店の一角から、「生命保険が……云々」という話し声が聞こえてきました。職業柄、気になってその方向にさりげなく視線を送ると、声の主は中年男性で、ひとめ見て生保のセールスパーソンとわかりました。どうやら若い夫婦を相手に保険の商談をしているようです。
驚いたのは、その男性の声がとても大きかったことです。離れた位置にいた私はもちろん、周囲で読書や仕事をしている利用客の数人が振り返るほどの声量でした。
ただでさえ座席の間隔がせまく、プライベートな話をする場所にはふさわしくないのに……。
私はその光景を横目で見ながら、個人情報が“ダダ漏れ”になっているその若夫婦に同情しました。もし自分が当事者で、店内に自分を知っている人がいたら嫌だな――、そういうことに配慮してくれない鈍感な担当者であれば、他のことでもギクシャクしそうだな――とまで思いました。
もちろん、セールスパーソンの場合は、相手の状況に合わせて毎日たくさんの商談をこなさなければいけないため、毎回ベストな場所を設定するのは難しいことでしょう。そもそも、冒頭の例は場所以前に、《話し方》に問題がある特殊なケースです。
とはいえ、クライアントが“安心して話せる場”や“大切に扱われていると感じる場”を用意することは、担当者としての信頼を得るにはとても重要なことだと私は思います。
実際、私が知る限り、トップセールスパーソンの方は、商談の環境づくりにはとても気を遣っています。商談に使える店を普段からリストアップしておくのはもちろんのこと、約束の30分前までには到着して一番良い席を確保したりしています。
お客様の都合に合わせなければなりませんから、ふさわしいお店が近くにないことだってあります。そういう場合、知人が勤務する会社の会議室を借りて“お客様と話ができる環境”を用意する人もなかにはいます。
そうするのは、自分の仕事もやりやすくなるからです。
それと、もう一つ理由があります。
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