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郊外型地主さんへのアプローチはいかにすべきか【後編】
相続ジャーナリスト/相続支援ネット 代表 江里口 吉雄
過去の“誤解の渦”によって「貸家建付地」は神話化された?
  土地活用のキーワードの中で「貸家建付地かしやたてつけち評価減ひょうかげん」が有名であるが、土地活用全盛時代のバブル期において、当時の金融機関や住宅メーカー、不動産業界は偉大なる“誤解の渦”で多くの地主さんを取り囲んでいた。当時、地主さんが信じて疑わなかった「借金をすると相続税が節税できる」というあの“神話”である。その言葉は決して嘘ではないが、実際のところはかなりいい加減な話でもある。
  借金をして土地活用することで節税となる仕組みを正確に理解している人は、その頃はほとんどいなかったといっても過言でない。あらためて解説すると次のようになる。バランスシート上、借金1億円は負債である。ここまではOK。次に借金した1億円は現金(預金)として資産である。つまり借金をしても建物工事中は負債と資産はプラスマイナスゼロである。無事に建物工事が完成すると翌年、現金(預金)は工事代金の支払いを経て建物は固定資産税評価として建物工事価額の約4割程度で評価される。そうすると資産の現金(預金)1億円は、固定資産4,000万円に化けるのである。
  さらに、その評価は貸家として▲30%で評価されるので2,800万円まで下がる〔=(1億円×0.4)×(1−0.3)〕。すなわち相続発生時の相続資産の建物評価は、借金1億円と建物資産評価2,800万円との差額で7,200万円まで資産の評価がマイナスになる。つまり、1億円の借金で7,200万円の資産評価減になるというものだ。
  そうなると土地活用する郊外型地主さんの大半は、資産の額から見て相続税の税率はたいがい40%以上であるから、仮に40%とすると資産からマイナス2,880万円〔=7,200万円×40%〕の節税となり、さらに土地の評価も貸家建付地▲18%評価減で結果的に大幅な節税になるということである。
  ただし、残念ながらそのように理解して当時土地活用した地主さんはあまり多くない。漠然と1億円借金すると1億円の節税になるという、今では目を疑いたくなるような話が当時は流行っていた。「1億円借金すると1億円節税が?」――そんな話も今や過去の神話になってしまったが、貸家建付地はそんな神話の中で今日まで熟成され続けてきた。
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