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「映画館ではゆっくり歩け」の言葉が教えてくれること
有限会社T.S総合企画 代表取締役 津田 秀晴
わかっていることについては、わからない状況が想像しにくい
  「なるほど! 部下や後輩にはこうやって接していけばいいのか……。他人に何かを教えるときには参考になるな」
  私が若いときに取材したある管理職研修で、こんなふうに腹落ちした、とても印象的な教えがあります。
  それは、参加者が二人一組で行うエクササイズでした。
  一人が目隠しをして、少し離れた場所にあるゴミ箱に向かって丸めた紙くずを連続して投げます。そして、もう一人は側に立って、「もっと右に!」「あと1メートルくらい遠くに!」などと、投げる方向や距離を指示していくのです。
  そのときに、指示があいまいだと紙くずはなかなかゴミ箱に入らず、「暗闇」の中で紙くずを投げている人もだんだん焦り、不安になってきます。
  逆に、指示が的確で親切だと成功率も高まり、投げる人も安心して指示に従うことができます。
  このエクササイズは、「新人が新しい環境で働くときの不安定な状況」と、「指示を出す管理職の心構え」を実感するためのものでした。
  新人にとって、日々の業務は、わからないことだらけ。まさに暗闇の中で紙くずを投げているようなものです。
  上司や先輩も、過去には同じ経験をしているはずですが、人間はすでに自分がわかっていることについては、わからない状況が想像しにくくなります。それで、つい言葉を省いたり、専門用語を使ったり、時には、相手の理解が遅いことにいら立ってしまう。
  しかし、この「目隠しエクササイズ」のようなイメージを常に忘れなければ、初心者への接し方も変わってきます。
  こうした実感を伴ったイメージを持っていることは、やはり両者の間で情報格差のある、セールスパーソンとお客さんとの関係でも大事だと思います。
  では、セールスパーソンは、わかりやすく親切な説明をしていくために、どんなことを心がければよいのでしょうか?
  今回紹介する『「分かりやすい説明」の技術』(藤沢晃治著、講談社ブルーバックス)の中には、例えば、こんな印象的な教えがありました。
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