Home > 営業スキル > わかると楽しい法律知識

 第4回
親権者になれなかった親は,
離婚すると子供に会えなくなるの?
弁護士/司綜合法律事務所パートナー 中込 一洋
本連載ではこれまで読者にとって興味深い判例を紹介してきましたが,今回は趣向を変えて法律専門書ではないけれど,法的な考え方の参考になる本を紹介します。ここ数年ノーベル文学賞の最有力候補と見なされていながら,今年も受賞はならなかった世界的な人気作家・村上春樹さんの短編集を取り上げます。
親権者の決め方
  筆者は,村上春樹さんの文章が,好きです。やさしい前向きさがあるから。苦しいときを乗り越える強さを与えてくれるから。
  今回は,村上春樹さんの短編集『女のいない男たち』(文藝春秋)に収録されている作品『ドライブ・マイ・カー』(48頁)に出てくる言葉について,法的に考えてみたいと思います。
  彼は高槻に結婚はしているのかと尋ねた。結婚して十年になり,七歳の男の子がいると相手は答えた。しかし事情があって去年から別居している。おそらく近々離婚することになるだろうが,そのときは子供の親権が大きな問題になるはずだ。子供に自由に会えなくなることだけはなんとしても回避したい。
  離婚すると覚悟したとき,子供との関係がどうなっていくのか,気になりますよね。高槻さんのセリフは,とても自然なものです。
  民法819条1項は「父母が協議上の離婚をするときは,その協議で,その一方を親権者と定めなければならない」と定めています。
  高槻さんについて具体的事情はわからないものの,別居のときに妻(母親)と子供が同居することに合意していること,男の子が7歳であることなどからすると,高槻さんが親権者になれる可能性は低いのかもしれません。
  親権者になれなかったとき,子供と面会できなくなるのでしょうか。
※ これ以降は会員専用ページです