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 第11回
賃貸借契約の敷金トラブルがなくなるの?  債権法改正その3 
弁護士/司綜合法律事務所パートナー 中込 一洋
政府は,債権法の民法改正案を3月31日に閣議決定し,今国会で法案成立を目指しています。今回は改正案のうちの「賃借人の原状回復義務」について解説します。この場合の原状回復とは、賃貸契約を解除した際に,契約締結以前の状態に回復させることをいいます。
賃借マンションを退去するときに
  マンションの賃貸借契約では,退去するときに賃借人(借主)が原状回復義務を負い,それに要する費用を敷金から控除する(預かっていた敷金から,費用を控除した残額のみを賃貸人(貸主)が返還する)という約束をするのが一般的です。ところが,実際に退去するときになると,どこまでの回復費用を負担しなければならないのかを巡って見解が対立し,トラブルになることが多くあります。
  この点について,現行法には,明確な規定がありません。
  そこで,この点に関する規律を設けることを内容とする民法(債権関係)改正案が現在,国会で審議されています。なお,本件に関する条文案は法務省のホームページに掲載されています。
(賃借人の原状回復義務)
第621条
賃借人は,賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において,賃貸借が終了したときは,その損傷を原状に復する義務を負う。ただし,その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは,この限りでない。
(敷金)
第622条の2
1  賃貸人は,敷金(いかなる名目によるかを問わず,賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で,賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において,次に掲げるときは,賃借人に対し,その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
(1) 賃貸借が終了し,かつ,賃貸物の返還を受けたとき。
(2) 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。
2  賃貸人は,賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは,敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において,賃借人は,賃貸人に対し,敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。
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