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 第12回
約款についても民法で定めるの? 債権法改正その4 
弁護士/司綜合法律事務所パートナー 中込 一洋
今回は,保険業界にも密接な関わりのある「約款」の規定の改正案について解説します。
「約款」って何ですか?
  不特定多数の顧客との間で大量かつ画一的な契約を締結する場合,その内容を個別に交渉することは困難です。例えば,電車に乗るとき,乗客一人ひとりと運賃を交渉するのは非現実的ですよね。
  そこで,多くの事業者は契約内容をあらかじめ文章化しておき,それを受け入れる人とだけ契約する(異なる内容を希望されるなら契約しない)という対応をしています。生命保険契約でも,保険金額などは選べますが,保険金支払事由や免責事由などについては個別交渉に応じないのが通常です。
  大判大正4・12・24民録21巻2182頁は,保険契約申込書に約款によると記載されていたことに基づいて,申込書に署名した以上は約款による意思があったと推定しました。これが指導的判例となり,約款の拘束力はひろく実務上認められています。
  しかし,現行の民法には,約款に関する規定がありません。
  そこで,この点に関する規律を設けることを内容とする民法(債権関係)改正案が現在,国会で審議されています。なお,本件に関する条文案は法務省のホームページに掲載されています。
「定型約款」を定義し,それに関する規律を新設
  改正案は,「定型約款」を対象としています。
  定型約款とは,ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって,その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なもの(定型取引)において,契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体のことです。ここでは,契約内容の変更を求めない(交渉が行われない)ことが合理的であるときを想定しています。
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